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ニーチェ「恐怖や緊張を克服する方法/妬みから解放される方法」

今までに竜が蛇の毒で死んだことがあるか

「まむしのかみ傷」

さあ、わたしを祝福してくれ。やすらかな大いなる目よ、どんなに大きい幸福をも妬みなく眺めることのできるおまえ(太陽)よ。

「ツァラトゥストラの序説」

あなたには、怖いと思う人や、意識して緊張してしまう人がいますか?

恐怖や緊張を感じたときは、『ツァラトゥストラ』の「まむしのかみ傷」の話を思い出し、「自分は竜であり、相手は蛇である」と考えるのです。

「相手とは格が違う」と考えることで、余裕が生まれ、恐怖や緊張から解放されます。

ツァラトゥストラが微笑みながら蛇と会話したように、格が違いすぎると見下すことさえしません。

また、「ツァラトゥストラの序説」には、次のような言葉があります。「さあ、わたしを祝福してくれ。やすらかな大いなる目よ、どんなに大きな幸福をも妬みなく眺めることのできるおまえ(太陽)よ。」

太陽は人間と格が違いすぎるため、人間がどれほどの幸福を持っていても、妬むことなく眺めることができるのです。

恐怖や緊張を感じたときは「まむしのかみ傷」を、妬みを抱いたときは「ツァラトゥストラの序説」を思い出してください。

ツァラトゥストラのように、強い自信と高い自己肯定感を持つことで、恐怖、緊張、そして妬みから解放されます。

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ある暑い日に、ツァラトゥストラはいちじくの木の下でまどろんだ。その両腕は顔をおおっていた。すると一匹のまむしが来て、かれの頸を嚙んだので、痛みのためにツァラトゥストラは声をあげた。

かれが腕を顔から離して、まむしを見つめると、まむしはそれがツァラトゥストラの目だと知って、無器用に身をかえして、逃げようとした。

「逃げるな」とツァラトゥストラは言った。「おまえはまだわたしの感謝を受け取っていない。おまえはわたしをよい時に眠りから起こしてくれた。わたしの行くべき道はまだ長いのだから」

「あなたの道はもう短い」と、まむしは悲しげに言った。「わたしの毒は、命を奪う毒なのだ」

ツァラトゥストラは微笑した。「今までに竜が蛇の毒で死んだことがあるか」──そうかれは言った。

「だが、おまえの毒を取りもどせ。おまえはそれをわたしに贈るほど、富んではいないのだから」

それでまむしはもう一度ツァラトゥストラの頸にからだを巻きつけ、その傷をなめた。

ニーチェ『ツァラトゥストラ』「まむしのかみ傷」手塚富雄訳、中公クラシックス、Kindle版。

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