山半ば 枯れ枝綴る 白い花
隠れ日に 泣き止まぬ風 我一人
世の中の物語は主に二種類に分けていますーー終わりに向かう物語と、始まりに向かう物語。未来への道を導き、涙があろうか悲しみがあろうか、最後に糧となってまっすぐに前に進める、始まりの物語は人の心には残れない。逆に過去を引きずって前に進めず自分の一生を過去に捧げた悲劇が心に残る。それは誰であろうと、必ず一度は「後悔」したことがあるからではないかと思う。終わりに向かう、悲しいと虚しさ、寂しさしか残れないが、それでも何事も終わりがある。その終わりは必ずと言えるほど、ネガティブな感情を含
ーーそれは春だった。 雪がまだ溶けてない、氷が地面を覆い。花や芽がまだ土の中で眠り、春らしくない春だった。春の暖かさもなく、春の愛しさもなく、風さえ厳しく、一風変わった春だった。それでもわずか、本当にわずかであるが、緑色のなにかが庭の隅にあった。苔かどうかはわからないが、あの春らしくない春の中で唯一、春らしいものだった。白い布を飾るように、ほんの少しだった。白いしかなかったあの季節の中の、聖地だった。そこに近付こうともしなかったのもこれが原因なんだろう。とにかく特別の何かだっ
春の終わり、雨と共に、命を尽すまで舞い踊り、この世にせめて跡を残そうとしているように、浮世の花は散り散りと。過程が美しく、記憶に残るような素晴らしいダンスで、最後の一瞬を演じ終え、そして輝きを失い、腐って地に帰る。瞬時的で、終わりに向かう「終えの美」。この晩春にふさわしい景色とも言えるであろう。 未来に羽ばたくもの、過去にひきずるもの、出会いを楽しみもの、旧縁と別れを告ぐもの。晩春と呼ばれた季節で様々な物語が起き、終わりの始まりで舞い踊り、世という舞台で、百年足らずの美しさを
若鳥に 負けずに盛る 老いた犬
白の原 芽咲きの春に 溶ける花
天は枝 雲が葉となり 神の花 師走にて散り 世を清むびら
老い山や 落ち葉に飾る 白い花
一夜して 山も老いたか 白き髪
鳴かぬのも 定めであろう ホトトギス
飾り木や 夜空を綴る 白き花
寂びる音 絶えた声出ず 竹も咲く
河原に 石を積み上げ 不帰の客
枯れ葉にも 年を取るのか 霜鬢颯然(そうびんさつぜん) 霜鬢颯然→杜甫の「書堂飲既夜復邀李尚書下馬月下賦」の中の一句で、「髪が霜に覆われたように白くなっても凜々とする姿」を意味する言葉です。この句で逆にとって「白髪みたな霜に覆われて秋風に吹かれても動かない状態」を指す。
木の悩み 光も曲がる 逆蛍 逆蛍:ハゲの隠語