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小話:夏への手紙

拝啓 気持ちのいい秋風が吹き渡るころとなりました。貴方はどこでいかがお過ごしでしょうか。またマレーシアにでも行って海を温めているのでしょうか。

今年の夏はあまり貴方を感じる機会がなかったように思います。夏の風物詩である花火もなく、お祭りもなく、海に出かけることもなく。貴方に逢える機会が減ってしまったようで少し寂しく思います。

一方で、燦燦と差し込む日差しや朝起きた時に騒ぎ立てる蝉の声、空にもくもくと聳え立つ入道雲に貴方を思い出すこともありました。そういえば、あまりの暑さに駅まで15分、道を足早に歩きながら、早くどこかへ行ってしまえと貴方を恨んだこともありました。貴方が去った今となっては、遠くから見た太陽に照らされて輝く海や友人と食べた冷たいアイスの甘さ等、楽しかったことが思い出されるばかりです。貴方に今年も逢えたことを感謝しています。

なんだかとりとめのないことを書き連ねてしまいました。今年もありがとうございました。また来年お逢いできるのを楽しみにしています。来年こそは貴方を感じられる機会が多く訪れますように。

敬具

二〇二一年九月二三日

                                 私

夏 様

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