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【書籍紹介】内田樹『困難な成熟』:成熟は意識できるのか?

水曜日はいま読んでいる本とかについて書いてきます
近いうちに有料noteに移行します。

先日、この本を自分の高校に寄贈をしました。そのときの推薦文になります。

内田樹『困難な成熟』(夜間飛行, 2015)

 まあまあ(自分のちびすけたち)と比べても長く生きていても生きている私が、成熟について考えるようになったのは、本当に最近のことです。正確にいえば考えるところからスタートして、ジャックマイヨールのように思考の奥底まで潜っていました。でもある日考えていること自体が成熟から一番遠くにいることだなといきなり感じたことで、やっと「よくわからないものをよくわからないまま受け取れる」ことができるようになりました。

 成熟とは自己創造のことです。葛藤なき自己創造もまたありえない。そして、人間のあいだで、二つの原理が衝突しているときに、それを「どうですここはひとつナカとって」と介入することが求められる。

 たぶん、いろいろな人間関係の悩みをかかえているかもしれません。でもそれは人間として生きている限り仕方がないことです。その時に、上手くいかない人と「上手くいかない人だから仕方ない」とそのままにするのではなくて、上手くいかないなりに「ナカをとる」ことをし続けることが成熟に向かうことかもしれません。いまはそれができないとしても、薄皮を剥くように少しづつ出きるようになります。

 それはタイトルの通り「困難な成熟」なのです。今日明日に成熟する方法とか、成熟を計ることはだれにもできません。今日できたことが明日できなくなるかもしれない。でも代わりのことができるようになるかもしれない。そんな日々を過ごすことを感じさせてくれる本です。


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