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問いを立てることの重要性について

なんでも問題提起をして場を乱すのではなく、自分が捕らわれている檻を認識しつづけるために「問い」を発しつづけている。ところがその檻はとても我々にピッタリくっついていて、ラカンのいう「ラメラ」のように張り付いているものに対して「問い」という形式を通じて意識することができる。

一度遠回りしてラカンの「ラメラ」について考えてみよう。これについてはスラヴォイ・ジジェク「ラカンはこう読め!」の「エイリアン」観るラカンを引用せざるをえない。

この怪物の中では、純粋に邪悪な動物性と、機械的で盲目的な執着とが重なり合っている。エイリアンは、純粋な生としてのリビドーであり、破壊することはできず、不死である。
(中略)
その怪物性は表象不能であるにもかかわらず、ラメラは依然として<想像界>の領域内に留まっている。ただし、表象不能なものの限界まで想像力を広げよう努める、一種のイメージとして。ラメラは<想像界>と<現実界>が交叉する点に住み着いており、すべてのを飲み込み、すべてのアイデンティティを溶かしてしまう原初の深淵として、最も想像界的な次元における<現実界>を表している。(スラヴォイ・ジジェク「ラカンはこう読め!」P112-113)

この後我々が「対象a」を目指すとしてという話になるのだが、そもそもラメラがいることが近くするためには、ラメラについての問いではなく、ラメラがいることについての問いを始めなければ、<想像界>と<現実解>の交叉する点を知覚することすら始められない。我々は問いという形式を通じてしか、知覚の痕跡を感じることはできないのである。

というわけで、最近出版された「クリエイティブ・ラーニング」を読み終わるとなにか違和感が出てきてそれが払拭できずにいた。そもそもなにに対して違和感があるのかわからないでいたので一度最初に戻って読み返してみると、その答えは、この本を開いた最初のほうの一文にあった。

日本は、戦後、欧米の社会に「追いつけ、追い越せ」と、のわかりやすく模倣すべき対象が存在していたため、必ずしも自分達の未来像を自分達で産み出す必要性がなかった。しかし、他の先進国に肩を並べ、単純に追いかけていけばよいという対象がいなくなった現在、私たちは自分達の未来像を自分達で作っていく必要がある。ところが、現在私たちが目にしているのは、その構想のための想像力が社会的に欠如しているという現実ではないだろうか。しかも、すべてがつながったグローバルな時代においては、もはや自分の地域・国の未来だけではなく、グローバルな世界全体の未来、地球規模での未来を描かなければらならない。(井庭崇「クリエーティブ・ラーニング」P11)

太字で示した「必要がある」と断言されているが、この断言は「我々は自分達で未来像を作らなければいけない」という前提が存在している。この前提はすでに日本人の民族的奇習の中にすでに留まっており、いわばラメラに気がつかずに発している問いなのかもしれない。もしかしたら「この未来像をなぜ作らなければいけないのか」という問いこそが、最もクリエイティブな問いにもかかわらず、この問いについて立ち返ることなく議論が進んでいくことに最も違和感があった。

以前読んだ内田樹先生の本で「何故我々は継続的な経済発展をしなければいけないのか」という問いをだすことがなく「継続的なな発展をするためにはどうすればいいか」という議論しかされていない、というのが書かれていた。出典について探すために昨日、手元にある数冊を読んだけどどうにも見つからずにいた。もしかしたらグローバル化が何故必要なのか、なぜ未来を描けなければいけないかという問いを発することができる教育こそが必要であって、決してグローバル化のために必要な教育は存在しない。そのような教育を望む親は、自身がグローバル化していない、という前提にたってしまうことで、子供がグローバルになること、すなわち日本からの脱出レースに参加して勝たなければいけないという、すでに本書で語られている教育の形と対極のところに行っているのではないだろうか?

「クリエイティブ・ラーニング」は600Pを越える大著である。この本はあくまでも、実は「クリエイティブな世界を作るために」に「追いつけ、追い越せ」という形式の問いから抜けていないことをいまだ抜けていないのではないかという問いを発せられるかが、「クリエイティブ・ラーニング」を行えているかどうかという自己参照に陥ってる。その自己参照を断ち切るためには、実はすでに我々は常に「クリエイティブ・ラーニング」をしているという状況にいる立場にいるかもしれないという問いから始めるといいかもしれない。

以下個人的な意見。なぜ序章「構成主義の学びと創造」ではヴィゴツキーの「最近接領域」までいきながら、エンゲストロームの拡張的学習理論に触れてないのかが不思議……。


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