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万葉週話 no.4【ラピュタの「これがソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ!」の台詞を思い出す狭野弟上娘子の「天の火」の歌】

タイトル長くなりました(笑)
こんにちは、先日友達から「万葉作家」の名称をいただいた、まつしたゆうりです。

今週は、この一首のみが異様に頭に残りリフレインする
中臣朝臣宅守と狭野弟上娘子の贈答歌群をご紹介しました*

結婚→即離れ離れの宅守さんと弟上娘子ちゃん

万葉集の巻15は、先週ご紹介した遣新羅使の歌群と、このお二人の遣り取りの二本立て仕様。
どちらも公的な力により、遠く離れる人の心の様子を描いています。
(先週のお話はこちら↓)

宅守さんは弟上娘子ちゃんと結婚後すぐ、
何かしかの罪にとわれ越前に配流となりました。

これからラブラブライフが始まると思ってたところにその仕打ち、
そりゃあ、もう、悲しさ&やるせなさいっぱいになりますよね!

何の罪かはハッキリ分かっていないようです。
いつ帰れるかも分からない配流は、本当に辛いですよね。

「天の火」で焼き滅ぼさむ!!

万葉集 3724 狭野弟上娘子

君が行く 道の長手(ながて)を 繰り畳(たた)ね
 焼き滅ぼさむ 天(あめ)の火もがも

(訳)君が行く長い道のりを、繰って畳んで
   焼き滅ぼしてくれる天の火があれば…!

壮絶な思いを感じる一首ですよね…!
この激しさ、熱さが弟上娘子ちゃんらしくて
いつも読むたびドキッとさせられます。

他のお歌も鮮烈なものが多く

3750 狭野弟上娘子

天地(あめつち)の 底(そこ)ひの裏に
 我(あ)がごとく 君に恋ふらむ 人はさねあらじ

(訳)天地の底も裏にだって、
   私のようにあなたに恋い焦がれる人はいないわ
3772 狭野弟上娘子

帰り来(け)る 人来(き)たれりと 言ひしかば
 ほとほと死にき 君かと思ひて

(訳)「帰ってきた人がいる」と誰かが言うので
   私は死にそうになった。あなたが帰ってきたのかと思って。
3774 狭野弟上娘子

わが背子(せこ)が 帰り来まさむ 時のため
 命残さむ 忘れたまふな

(訳)私のいとしいあなたが帰ってくるだろう時のため
   私の命を残します。忘れないでくださいね。

は、激しい…!!
色でいうなら真紅!
与謝野晶子のお歌を詠んだときのような
赤い心地になります。

ちょっぴり地味穏やかな宅守さん

こんなに激しく想ってもらえる宅守さんは
娘子ちゃんとうってかわって、
どことなく穏やかな人の印象を歌から受けます。
(だからこそベストバランスだったのかも)

3727 中臣朝臣宅守

塵泥(ちりひじ)の 数にもあらぬ 我(われ)ゆゑに
 思ひわぶらむ 妹(いも)がかなしさ

(訳)塵や泥くらいのたいしたことない僕のために
   思い悲しんでくれる君が愛おしい
3730 中臣朝臣宅守

恐(かしこ)みと 告(の)らずありしを
 み越路(こしじ)の 手向(たむけ)に立ちて 妹が名告(の)りつ

(訳)畏れ多いと言わずにいたけれど
   越への路の神様への手向けに立ったとき、
   たえられなくて君の名前を言ってしまったよ
3732 中臣朝臣宅守

あかねさす 昼は物思(も)ひ 
 ぬばたまの 夜(よる)はすがらに 音(ね)のみし泣かゆ

(訳)昼は物思いに、夜は一晩中、君を想って泣いています。

か、かわいい…!
穏やかで地味な表現だけど、ひたむきな気持は強く、
なんともいじましく感じます。

弟上娘子ちゃんも、そういうところにキュンときたのかも。

宅守さんベストソング

3780 中臣朝臣宅守

恋死なば 恋ひも死ねとや ほととぎす
 物思(も)ふ時に 来鳴きとよむる

(訳)恋しくて死ぬなら、恋しく想って死ねというのかホトトギスよ。
物思いに浸るときに来て、切ない声を鳴き響かせるのは。

これは遣り取り歌群の最後の方におさめられている一首。

こう、今までひたひた積み上がってきた想いが
爆発した感があって、宅守さん作の中で一番好きな歌です。

二人の遣り取りを見ていると、表出のし方は違えど深く強い想いで結ばれていたんだろうなあと
歌を読めば読むほど感じる歌群でした。

皆様はいかが思われましたか?

ここでご紹介したのはほんの一部。
よかったらすべての遣り取りを
ご覧になってみてください*

狭野弟上娘子の「天の火」の歌、
「裏ベストソング」にてご紹介しています↓

ムスカの努力家っぷりについて

動画ではむしろこっちの方が熱量たっぷりで
話してしまった感のあるムスカ話(笑)。

節々に織り込まれた情報を掻き集めて考えるに、
(努力の方向は違ってしまえど)
自分の設定した目的のために
「きちんと有効的な努力ができる人」
な面がたくさん見えて、(きっと山羊座力高し)
「幸せになるための努力をして欲しかった〜」
と思わずにいられない、なんとも憎みきれないキャラクターだなと。

なにかひとつでもピースが違えば
あの位置に立たずに済んだだろうし、
でもそれゆえにシータとパズーが出会えたと思うと
なんともはや…。

ムスカ努力譚(推測)は動画にて熱く語りすぎたので
よければそちらをご覧になってください(笑)。
(燃え尽きた)

来週のインスタライブは

七十二候、蓮始開の過ぎたところということで
万葉集の蓮の歌をご紹介します*

お気に入りの一首があるので、ぜひその解説をば。

今日の暦🌕
蟹座 新月
二十四節気 小暑(小暑)
七十二候 温風至(あつかぜいたる)

☘️7/17(土)AM11:00〜
リアタイだとコメントにて質問などなど
遣り取りできるのお待ちしてまーす*

絵本作家・万葉&民話作家 まつしたゆうり

「心をつなぐ扉を描く」水彩画
 
昔から伝わる物語を、今に届く形にして
お届けしています*

大阪在住、滋賀県長浜出身
大阪芸術大学デザイン学科卒



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一面に田んぼの広がる田舎町で、
虫と草花と、本を友として育ちました。

幼い頃から 古典と歴史と仏像と恐竜と特撮と漫画とアニメが大好き!
心に触れることで果てしない空想の旅を一緒にできるような作品を作っています。

ゆったり季節に寄り添う暮らしと、日々 野鳥観察&着物。
鳥は愛でるのも食べるのも好き。

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