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明るい部屋

部屋が明るくなった
りょうこは
新しい世界に入っていった

徐々に
昼ご飯時に
一緒にいる人たちとも慣れてきた
そして
そうなると

ここにいたくない
一緒に帰りたい
っていうようになってきた

混乱のさなかにいる時は

どっちの世界にもともと住んでいたなんて
わからない

でもいわゆる正常化してくると

もともと住んでいた世界に戻りたくなってくるのだ

そういえば、どちらの世界も本来はあって
どっちを選んで生きているかだけなんだって思えるようになってきた

どちらがいいかなんて
わかんないから

りょうこは
お家に帰りたい
お母さん一緒に連れて帰って
って駄々をこねるようになってきた

つらかった

思い出す

保育園に預けているときだ

毎朝ぐずるりょうこを保育園に預ける
もう、ほうりこむって感じだ

面倒な奴だから
お世話してもらえてありがたい
ホッとする
きっとリョウコもほっとしてるんだろう
くらいに思ってた

リョウコのことを大事に思ってくれる友達や
先生のそばにいる方が
私と一緒にいるよりも
きっといいのだ

でも、それは私の言い訳だ

リョウコのことを好きになれなくて
可愛がってやれなくて
一緒に遊ぶことができないから

リョウコに楽しい時間を過ごさせてやれるのは
私じゃなくて
保育所だって
思い込もうとしてた

だから

保育園の重い玄関の柵から顔を出して
「ばいばい」ってしてくる
リョウコの顔をみるのが
つらかった

すぐに何ともなくなるのは知っていたけれど

一瞬でも

離れるのはさみしい

っていう顔されることが
つらかった
そんな顔をしてみないでほしかった
だって私は
そんなにあなたのことをかわいがってない
好きと思ってない
こんな母親でごめん

っていうことを
思い知らされるから

見たくなかった

一人部屋から
お母さん、一緒に連れて帰って

頼みながら手を握るリョウコを見る時
同じ思いがした

その手を振り払う自分を
本当に嫌な人間だと思う
仕方ないと思いつつも
私はそんな自分の想いを
打ち消すいっぱいの理由を考えている

明るい部屋というのは
ある意味
何もかもさらけ出されるのではなくて
陰と陽の
陰の影が濃くなって
自分の中で
ギャップが大きくなる
違和感が激しくなる

精神科の患者が
調子が良くなってきた頃に自殺することが多い
という理由は

そこだろうと思う

明るい部屋に行ったのは
暗い部屋ではわからなかった
ギャップに
徐々に慣れさせるためだ

どんなに日中明るい部屋にいても

夜はやってくる
りょうこのもとに
まだふさがっていない
無意識の領域から
やってくる



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