青春プチロマン小説「女が日本一周する時」第6話 作/奈良あひる
男がおいていったメモには、熱海市内にあるバーのショップカードで、裏のメモの欄には連絡先が手書きで書いてあった。そして、浅田と書かれていた。
何のメッセージかしら。
加恵は、学生時代、脚本家に憧れている頃があった。本の世界ではどこへでもいけて、何にでもなれて、どんなストーリーでも書くことができるからだ。そして、その内容は世になんて出なくてもいい。自分がその世界に酔えればいいという考えがきっかけだった。
脚本家という商売にしようとは思っていなかった。
社会に出れば恐らく、日々大変な世界があり、そのとき一人でこっそり逃げ出すための脚本の世界だった。しかし、逃げ切れず、会社では大変な想いをしたとにかくすり減ってしまった。
同じ日に、同じ店へ2回行く。
1回目に見かけた人から連絡先をもらう。
現実としたら、充分すぎるきっかけがきている。
何のあてもなくカフェラテがひとつテーブルの上にあるだけだ。
ゆっくりこの続きでも考えようか。
つづく
田中屋の少年雑記の短篇小説にも寄稿してます。
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