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2021.3.10 明治安田生命J1リーグ 第3節 FC東京VSヴィッセル神戸 マッチレビュー

リーグ戦2試合を終えて1勝1分の勝ち点4とし未だ負けなしの神戸は今節で勝ち点4で並ぶFC東京とアウェイで戦った。4年目を迎えた長谷川健太監督率いるFC東京はJ1屈指の実力者が集まるクラブであり、神戸は通算成績を通してもあまり勝てていない。しかし、ここから昨シーズンの上位陣である東京、名古屋、川崎と続くためACL圏内を目指すにあたり今シーズンを占うといっても過言ではない3連戦が始まる。勢いづくためになんとしても勝ちたいと望んだこの一戦を振り返っていきたいと思う。

[スターティングメンバー]

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神戸は徳島戦のスタメンから2人を入れ替え、ドウグラスと20歳の小林友希が入った。

[不安定な立ち上がりの東京]

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神戸は今までと違い、山川をSBのポジションに配置し、2CB+2CHでビルドアップを行った。おそらくFC東京は開幕からの数試合を分析して3バックでのビルドアップを予想して入ったが狙いを外された形になってしまった。そのため4-3-3で臨んだFC東京は神戸の後ろの枚数とうまく噛み合わずサンペールと山口がフリーで受ける形に。
アダイウトンがプレスをかける素振りも見せず、プレスバックする様子も無いためFC東京としては立ち上がりから神戸にやられたい放題。山口とサンペールが時折最終ラインに落ちることで数的有意を作られてしまい、インサイドの選手がプレスをかけに行っても中央を通されるため混乱状態に陥る。そこに古橋の裏抜けとドウグラスのポストが加わるため序盤に神戸の時間帯が立て続けに来た。そして前半5分に早くも神戸が先制点を奪う。菊池が競り合いに勝ち、サンペールの縦パスが郷家に入ってそのままシュートを放つ。相手GKに阻まれるもFC東京のDFがまさかのクリアミス。ペナルティエリア内で井上が拾い、ドウグラスが落ち着いてゴールに流し込んだ。

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20分頃からレアンドロがプレスの掛け方を変える。中央にボールを通させないようにボランチのコースを切りながら菊池にプレスをかけ、サイドに誘導する。山川に出たところに安部がプレスをかけ奪いに行こうとしていた。変更直後に東京がショートカウンターやロングボールを拾ってリズムを掴む。しかし、神戸も井上がフリーマン的な動きから中央で数的優位を作ったり菊池が運んでコースを作るなどの工夫は見せていたように思う。特にこの試合の井上は酒井高徳との連携が上手く取れているように見えた。サンペールや山口から酒井へのサイドチェンジが何本か通っていたが井上が背後へのランニングをすることで相手を引きつけて酒井がフリーで受けるシーンは数回確認できた。もともとクレバーな選手であるだけに左サイドで連携が取れてきたことで前半の起点を作る立役者になっていたように思う。

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そしてCBの小林友希も落ち着いたボール捌きでリズムを作っていた。20歳とは思えないほどの落ち着きとクレバーさを兼ね備えている。絶妙な予測でボールを奪い、東京の攻撃の芽を摘んでいく姿やビルドアップの貢献度を見ても昨シーズン横浜FCの主力として活躍してきた経験が活かされているように思う。前半33分には相手のプレスを小林がパウサで相手の足を止め、右足で内側を通し酒井にパス通し東京を押し下げた。このシーンを見ても全体を見ながら酒井とコースを共有して前進させている。今シーズンは出番が多くなると思われるのでここまでやってくれるのは嬉しい誤算である。

[古橋どう使いたいの?]

逆に不安定なのが右サイド。左で作って右に展開してもなかなか古橋が良い位置で受けることが出来ず、シュートまで持って行くことが出来ない。RSBが山川であるため致し方無い部分もあるのかもしれないが古橋を大外で受けさせるのは彼の得点能力からして宝の持ち腐れにしかならない。古橋が何度も安部の前でボールを受けようとするシーンが見られたがそれではゴールから遠ざかる一方で彼の良さを活かす事は出来ない。無理が利いてしまう選手であるだけにタスクが多すぎるのではないかとも思う。最大の決定機は裏抜けで受けた2本のチャンスだったことを考えると右サイドで決定的な仕事をさせるのは無理があると思う。

[4-4-2に変更した東京]

両チームとも選手交代を行わず後半がスタートした。FC東京は前半の終盤でレアンドロとアダイウトンの位置を入れ替えており、そのままレアンドロがトップで後半に臨んだ。この変更は守備的な部分の改善と思われるが神戸にとっては少しやりやすくなったとも感じた。それは右サイドに菊池と山川が居るためテクニックを使って抜いてくるレアンドロよりもフィジカルとスピードで真っ向勝負してくるアダイウトンの方が分があるからだ。

すると後半10分FC東京が先に動く。田川と東に代わり、ディエゴオリベイラと三田を投入し4-4-2にシステムを変更する。後半12分には早くも東京にチャンスが生まれる。中村から背後にランニングしたディエゴオリベイラへに渡りそのままクロスをあげる。惜しくもシュートまでいけなかったがシステム変更したことにより前線の選手が3人から4人に増え、攻撃に迫力が増した。

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しかし、後半20分に神戸が追加点を挙げる。井上がフリーマンで中央で受けるとサンペールと時間を作りサイドの酒井にボールが渡る。そこから山口とのワンツーで裏抜けし、クロスに郷家が飛び込み最後はドウグラスが押し込んだ。一瞬、オフサイドにも見えたがディエゴオリベイラが残っており、オンサイド判定。神戸が東京を突き放しにかかる。中村が山口に食いついてくれたためポケットまで酒井が侵入することが出来た。最後は運に恵まれたゴールだったが味スタで初めての複数得点を飾る。

[サンペール交代からのオープン合戦]

追加点を挙げたその直後にサンペールを下げ、増山を投入する。いつものように郷家がボランチに落ち、古橋がトップ、増山が右サイドという形だ。FC東京もFC後半26分にレアンドロと中村帆高に代わり、永井謙佑と中村拓海を投入し前掛かりになる。すると後半29分に東京が一点を返す。森重がボールキープしたところから左に展開し、安部がアダイウトンに上手く通した。増山が絞り切れていなかった分、山川がアダイウトンに対応するのが遅れそのまま菊池もディエゴオリベイラと入れ替わる形で最終ラインを抜けられた。最後は前川も落ち着いて交わし、ゴールに流し込んだ。その3分後にもアダイウトンに裏を抜けられシュートを打ったこぼれ球を永井が上手くゴールに決め同点に。5分の間に2点差を追いつかれる苦しい展開に。追いつかれたのもサンペールが交代し、ビルドアップを上手く進められ無くなってからのことだ。前川まで戻し雑なロングボールを蹴り込み相手に回収されるの連続。山口と郷家がどちらも中央で受けられ事が出来ないのでサイドにつけるしかなくそこを詰められ最終ラインに戻すプレーばかり。さらに東京もフレッシュな選手が入ったことで前から取りに行くため、典型的なJリーグのオープン合戦が始まる。これでボールを握りながら試合をコントロールしたいと言ってるのだから滑稽だ。井上と交代で入った佐々木を始め、ドウグラス、増山のキープでしか陣地回復が出来なくなる。それでも後半40分に郷家がミドルシュートの跳ね返りから自ら押し込み、勝ち越しに成功。偶発的にゴールを奪いこのままゲームは終了。勝ったものの反省や課題しかないゲームだった。

[まとめ]

神戸の3得点すべてが偶発的に生まれた得点での勝利。まさについてるとしか言い様がない。それと共に神戸と同じくらいFC東京が悪かった。途中、4-4-2に変更してからは強さを発揮していたが前半の4-3-3ではスペースを突かれ試合の主導権を神戸が握った。長谷川健太監督が4-3-3を試すと悪くなるというのはガンバの時からそうであったようにFC東京もその流れになっていくのかもしれないと感じた。神戸は2点のリードを奪いながら追いつかれた事は猛省しなければならない。試合運びという点でボール保持型のチームは非常に重要な観点になってくる。試合をコントロール出来ないのにも関わらずボール保持しようとする行為は相手に得点のチャンスを与えているのと変わりない。サンペールが交代してからろくにボールが運べなかったことを三浦監督はどう感じているのだろうか?そもそも郷家にどのようなことを期待してボランチで起用しているのか全く見えてこない。この試合に関しては守備もサンペールの方が良いように見えた。3点目の勝ち越し弾を決めたように前でプレーさせるのが適切であると感じる。悪い攻撃から悪い守備を体現してしまった神戸は運良くこの試合に勝利したがこのままではACL出場圏内は遙か遠く先の事となってしまう。名古屋、川﨑との2連戦を控えているだけに不安な試合内容である。試合後、山口蛍は危機感を感じるようなコメントを残しているように選手自身はいろんなモノを感じているのだろう。それでも前に進まなければならない。

FC東京2-3ヴィッセル神戸

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