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試される熊野参り

三重県に行き、泊まりが和歌山県新宮市でした。
調べたら、世界遺産の熊野エリアではありませんか!

「紀伊半島は大陸説」があるそうですが、それを実感する二泊三日の大旅行となってしまいました。

まずは、三重県松阪駅で待ち合わせて、三重県と和歌山県の県境にあるミカン農家さんに向かいます。車で移動している範囲が、すごい山道。

途中、誤って高速を降りてしまってとんでもない山道を熊野灘沿いに進むことに。信号があると「人里!」と感動するレベルの山道。

熊野灘は、穏やかな感じでした。


そんなこんなで、名古屋→松阪で3時間、松阪からさらに3時間で目的のミカン農家さんに到着。

みかん畑でむしっては食べ、むしっては食べ…

で、新宮市という熊野詣での入り口にあたる街に宿泊したので、これを逃すと一生熊野なんかこないんじゃないか!と思って、熊野本宮大社に強行します。

マスクと帽子とマフラーと手袋で極めて露出のない装い。
しかし、熊野には温泉があり(世界遺産にも登録されてるつぼ湯や、川を掘ればお湯が沸いてくる)、冬季には川に混浴無料露天風呂があると聞いて直前まで水着を持っていくか相当悩んでいた。
この厚着で水着持参とは。(結局やめました)

バスからの景色は、川と山と、山道…
揺れはひどいです。
バスはトイレ設備などもある大型バス以外は苦手なので、相当覚悟して準備して挑みましたが、景色の良さに救われました(最後の15分はグッタリして1分でも早く降りたかったけど)

新宮駅から熊野本宮大社前まで、80分くらいバスに乗っていきます。1540円。ほとんどの人は、3日間のバス乗り放題パスを使っていた様子。確か3500円くらいだったと思う。

熊野本宮大社です。

そう、ここが平安時代からの超有名観光地、聖地、トレイルランコースのゴール、熊野本宮大社です。

午前中だったのと、平日だったのと、さらに定休日のお店が多かったので、とにかく人が少な目だった。

といいつつ、そこそこ人は途切れることなくやってきています。
バスの道すがら、本気のトレイルラン装備(ぴっちりしたスーツにストックを両手に持ってサングラス)の人も、本気のバックパックの人も見かけました。

励まされた。

巨大な文字が書かれています。

撮影禁止の場所が多くて(まあほとんどの人はそれでも撮りまくっていたけど)、あんまり写真撮ってないんですが、お社は質素で、想像よりこじんまりとしている。
でも、厳か。

ただ、もう全体に、世界遺産に登録されたせいなのか、日本背負ってるしアピールがすごくて。看板がたくさん立っていて、書かれている言葉が全体的に自意識強め。

とっても世俗的な感じが……。

ちなみにこれは、新宮市の老舗スナック武蔵野で見せて頂いた宮司さんの直筆の色紙だそうです!
「熊野本宮大社の宮司さんは、天皇家の御血筋」「九鬼家なんです」
と、とにかくありがたい感じが全面に。
「あー、うちにもあるけど印刷のやつだわ!」
「これは本物よ?」

熊野本宮大社の看板は、もう強制的に「おかえりなさい」ここがあんたの魂の帰る場所なんだからね!と、強制送還体制である。

なんでしょうか、この「背負ってる」感。

大斎原(おおゆのはら)。
ここは、とてもいい場所で。もともと本宮大社があった場所だけど、明治の大水害で流されて場所を変えたのだそう。
だから、いまでも大事な場所として祀られている。
いったのは冬なので、これが緑萌える春先や初夏だったら、どれほど美しかっただろう。

大切に…やさしく…

ごはんは、高菜で包んだめはり寿司。おかかご飯のおにぎりって感じです。

観光センターは無料でいろんな資料を見せてくれて、暖房が効いてて、ベンチがあって明るくて最高でした!ぼっち参戦者にも優しい!トイレもキレイ!感動です!!

そうそう、私はヤタガラスに挨拶しておこうと思って熊野に来たのです。
(ヤタガラスモチーフのジュエリーを作りたいなって思っていたので)

ヤタガラスは、この地方で天皇をお導きになった神の使いという、三本足の烏の事です。サッカー日本代表のエンブレムでもある。
太陽の神様、道案内の神様。

新宮市に戻って、熊野三山のひとつ速玉大社へ。

本宮大社と比べると、朱塗りの華やかな社殿で、人も多くて。狛犬もものすごく大きい!

ここはすごい世俗的というか「足腰守り」から「インフルエンザ守り」まで、世俗の苦しみはとりあえずなんとかしましょう!みたいな、前向き過ぎな御守りを連発していて、なんというか圧がすごい。

ここは神倉神社という本宮から速玉大社として熊野三山に名を連ねる事になったらしく、もとは最初に神が降り立ったという神倉神社の御朱印も授けてくれます。

そう、神倉神社。あまりに急坂の石段を上る必要があるので、足腰守りなんかあるんでしょう。非常に納得の、強烈な階段でした。
速玉大社からは、静かな住宅地と小学校の横を通り過ぎて1.5キロくらい歩いた先にありました。(グーグルマップすごいよね!)

実に質素、だけど、なにかこう…
すごい場所です。神倉神社。

最初に神が降り立ったとされる巨石が山の上にあって、そこから熊野三山が生まれるという流れのようなんですが、つまり山の上に巨大な岩があるそうです。ゴトビキ岩という、その巨石がご神体なんだとか。

見よ、この石段。
写真じゃわかりにくいでしょうが、ほぼ壁。

上から見ると、こう。

身の危険!

本当は上まで登ってみたかったのですが、ある程度よじ登って、これで下るのはあまりに危険だと思ってあきらめました。
降りるの怖い。もっと体を鍛えねば。
足腰守りを買えばよいのだろうか。

松明が駅前通りにぶら下げられてた、このほうきみたいなやつですが、これは松明です。
なんとこの松明をもって、2000人くらいの男たちがあの石段を上からダーッと下ってくるお祭りが2/6にあるそうです。

諏訪の御柱とかもそうだけどさー、岸和田のだんじりとかもだけどさー、年に一度攻撃性を前面に押し出して命捨てる方向に弾ける系のお祭りって、なくなりませんねえ。

世界中にありますし。


結局、熊野ではなんだか御守だけを山ほど買って、翌日名古屋でお会いする方のおみやげにもうで餅というお菓子を買っただけで、これといったおみやげもなく帰りの電車に乗りました。

しかしな、その電車がまたくせもので!!!

一時間に1本。
しかも急行は1日2本。

15:30の鈍行に乗るか、17:30の急行に乗るかの二択で名古屋に8時代に着くという。
もう、急行も「えっ、まだ三重県出てないの!」「やっとここまで来て、まだ津!?」「名古屋、名古屋はどこにあるの」という紀伊半島から出させない仕組みがあるらしい。

電車に乗っている時のほうが気絶するかと思った。
(熊野大社からの帰りのバスも半分眠っていたけど、ここも半分眠ってなんとか過ごした)

やっとのことで名古屋について、友人に会う。
「どこいってたの?」
「熊野」
「そんな遠いとこ行かんて!熊野でしょ!」
「うん。遠かった」
「パワースポットなのに疲れ果ててるじゃん」
「正直吸い取られた感ある」
「伊勢でやめときゃいいのに」
名古屋では熊野の評価は低めのようです。(他の人にも同じこと言われた)

「で、美味しいものあった?」
「うーん、それほどは」
「神社は?」
「まあまあ」
「なんでいったの」
「いや、このタイミング逃したら、絶対行かないなと思って」

あ、今回行かなかった那智の滝は、一番いいと思います。滝だし。

そもそも世界遺産に登録されたのって、道なんですよね。
簡単にいうと、トレイルランのコース。
山道です。
本気で走りたいとか、修験道に憧れるとか、気が、エネルギーが、っていう楽しみ方をしたい人にはいいのかもしれないけど、「おいしいもの、珍しい風景」みたいな観光をしに行くところじゃないかなあと。
ただ日本最古レベルの温泉には行ってみたいなって思いました。熊野本宮大社に行く途中にあります。世界遺産にも入っているつぼ湯という小さなお風呂もあって、そこはとっても気になった!
温泉メイン&神社がちょうどいいと思いました……。

熊野は、「ここまで来れたら許してあげる!」みたいな、道のりで試される聖地なんだという事がよくわかりました。
行く事で、試される。その道のりをこえてこい、的な。

で、行きはよいよい帰りはもっと大変!

熊野は、帰りまでフォローはしてくれません!
ヤタガラスさんも道案内だけです!!

なんとしてでも行って、這ってでも帰ってくる。
試される道、それが熊野。

昔の人は、よくここを歩いたなあ……。
スニーカーもダウンもない時代に。

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つよく生きていきたい。