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Chicago「Chicago Ⅴ」(1972)

シカゴは絶対ライブに限る…。初期の熱いシカゴの演奏を聴き、そう感じました。YouTubeにはシカゴのライブが多数アップされてますので、これらを楽しまれている方も多いかと思いますが、特に本作「ChicagoⅤ」の楽曲は、スタジオ録音より圧倒的にライブ演奏が素晴らしいのです。

このアルバム、シカゴのスタジオアルバムとしては4枚目、ライブアルバムも含めると5枚目の作品となりますが、なんと初めての1枚ものアルバムなんですよね。当時、ようやくシカゴのアルバムが買えた…との話はよく聞きますね。
後に主導権がロバート・ラムからピーター・セテラ(デヴィッド・フォスター)に移り、ポップ&AOR志向へ転換していくシカゴですが、そのポップな色彩が本作から少しずつ見え隠れしております。そういった意では本作はバランスの取れたアルバムとも云えます。

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プロデュースはお馴染みのジェームズ・ウィリアム・ガルシオ。ロバート・ラムが全10曲中、8曲書いております。
本作のハイライトってどの曲でしょう。一般的には大ヒットした⑦「Saturday In The Park」でしょうね。でも私は断然④「Dialogue Part1」~⑤「Dialogue Part2」を推します。ロバート・ラムが作った名曲を、テリー・キャスとピーター・セテラがリード・ヴォーカルを分け合っております。Dialogue…、対話っていう意味ですが、タイトル通り、テリーが過激派、ピーターが政治に関心のないノンポリ派として2人が対話している歌なんですよね。そして最後に過激派が「君と話せてよかった、スッキリしたよ、ホント、この先どうなるか不安だったんだ」と安心します。
この曲が凄いのは、そういう政治的な内容の歌詞なのにとにかくポップだということ。野性的なヴォーカルのテリーとスマートなヴォーカルのピーターの対比、PartⅡでのシカゴらしい演奏(変拍子有)、テリーのアグレッシブなギター、どれもが聴き所満載。そしてここでのライブでは最後の1分のアカペラが圧巻。凄い!フルボリュームにして視聴してほしい。

アルバムのオープニングからいきなりテリーのジミヘンばりのフィードバック奏法のようなノイジーなギターから始まる①「A Hit by Varèse」。
3拍子のかなりプログレ的なアプローチの楽曲。ここにホーンが絡むところがシカゴらしい。この曲なんかはピーター・セテラのベースがかなり独創的なことがよく分かります。ロバート・ラムが奏でるキーボードもキース・エマーソンっぽい。オープニングからアグレッシブなナンバーです。

③「Now That You've Gone」も豪快なダニー・セラフィンのドラミングから心を掴まれます。

こちらも3拍子の楽曲。ダニーのドラムはジャズからの影響が窺えつつ、オールマイティなドラム・スタイルで結構好みです。この当時のステージングはドラムのダニーを中心に左にテリー、右にピーターと変則的ですが、迫力あるステージングでした。

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この「Now That You've Gone」はトロンボーンのジェームス・パンコウの作品。ヴォーカルはテリー。間奏の疾走するホーンとエンディングにかけてのアグレッシブなバンド・アンサンブルが圧倒的にカッコいい。
実はこの曲もライブ・バージョンがアップされてまして、そのエンディングのウォルター・パラゼイダーのサックスソロが圧巻。音が小さいので、先にスタジオ音源をアップしたのですが、こちらの映像も是非お楽しみ下さい。

何の説明も要らないでしょう。名曲⑦「Saturday In The Park」。
ロバート・ラムっていい曲作りますよね。この曲は歌詞、メロディ、そしてバンド・アンサンブル、そしてアレンジ、全てが秀逸な第一級品のポップスじゃないかなと思ってます。ある公園での土曜日、独立記念日でもあったその日、人々が自由を謳歌している姿が思い浮かびます。

テリー作、そしてテリーが歌っている⑩「Alma Mater」。
かなりスワンプ&ゴスペル風味なザ・バンド的な楽曲。ホーンも最後の方で控えめにしか入ってこないので、シカゴの曲??と思ってしまいます。よく聴くとテリーの弾くアコギが美しい。テリーって、どんなジャンルのギター・スタイルも弾きこなしてしまう方だったんですよね。味わい深い楽曲です。

本作ではまだ初期のアグレシップなシカゴが堪能出来ます。この後、シカゴはジェームズ・ウィリアム・ガルシオがコロラドに作った「カリブスタジオ」からアルバムを制作することとなり、商業的にも成功を収めていきますが、70年代後半、ガルシオとの対立、テリーの死等々苦難が待ち受けているんですよね。

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