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松田聖子「Pineapple」5th (1982)

1982年、私は当時中学生。松田聖子が一世を風靡していました。女子の同級生は誰もが松田聖子を聴いてましたが、洋楽を熱心に聴いていた私は、そういった歌謡曲を聴くことに抵抗がありました。
ましてや松田聖子のレコードを聴くなんて考えられないことでしたが、当時私の妹がたまたま「Canary」というアルバムを買って、よく聴いていたので、ちょっと参考がてら聴いてみると、これがイイ。でも仲間には松田聖子のLPがいいんだよ~、とは言えませんでした(笑)。妙なプライドがあったのかもしれません。

本作も後追いで聴き返したのですが、かなりポップ指数が高い名盤であることに感激。名曲2曲以外も素晴らしい楽曲を含むアルバムとしてご紹介しておきます。

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名曲とはもちろん⑤「渚のバルコニー」と⑧「赤いスイートピー」ですね。
今でも名曲⑧「赤いスイートピー」をついつい聴きたくなることがあります。当時はありきたりの楽曲だと思っていたものですが、歳を取るにつれ、松本隆が描く詞の世界観と呉田軽穂(ユーミン)が書き上げた素晴らしいメロディが、胸に染みるようになりました。永遠の名曲…。
イントロを聴くだけで、妙に胸が熱くなります。

松田聖子の初期のアルバムの素晴らしいところは、そのサウンドプロダクションにあり、彼女のキャンディ・ヴォイスと合う楽曲と演奏に妙味があると思ってます。
前作「風立ちぬ」ではすべて作詞を松本隆、そして作曲陣には大滝詠一、鈴木茂のはっぴいえんど組、財津和夫、杉真理と、完全にニューミュージック界の重鎮たちを揃え、多くのファンを魅了しました。
そして本作。チーム松田聖子はなんとニューミュージック界の異端児(??)原田真二を大胆に起用。このアルバムで素敵な2曲を提供しております。

ちなみにサザンや福山雅治が所属していることで有名なアミューズ。実は当初は原田真二をデビューさせるために立ち上げた芸能事務所で、そのアミューズを、原田真二はデビュー3年目の1980年に移籍、独立を果たします。松田聖子に楽曲を提供した1982年、彼は既に独立をしていた訳で、本来であれば芸能界に干されてしまう可能性があったと思われますが、やはり実力があったのでしょう。
チーム松田聖子のサウンドプロダクション能力にも感服してしまいます。

さて原田真二提供の2曲とは②「パイナップル・アイランド」と⑥「ピンクのスクーター」で、両曲とも本作のキーとなる楽曲です。
②「パイナップル・アイランド」、明らかに今までの作曲陣とはちょっと違う洋楽テイスト溢れるリズミカルな1曲。
撥ねるようなベースはなんと伊藤広規。故アンドリュー・ゴールドを思わせるポップスです。実はアップダウンが結構あるので、歌うと結構難しいと思われますが、そこはやはり天性のシンガー、松田聖子・・・、上手いですね。
ちなみにアルバムの帯コピーは「シュロの香り、南風 いま、ココナツ色の気分・・・聖子」。この楽曲の歌詞の世界です。

そして⑥「ピンクのスクーター」。素晴らしい3連ポップス。最初にバックで流れる電話のコール音のアレンジもgood!。
松原正樹の1分53秒あたりの間奏のギターは完全にジェイ・グレイドンですね。

このアルバムは「夏」を意識した音作りをしていますが、トップの①「P・R・E・S・E・N・T」、これがまた素晴らしい。
作曲は意外にも来生たかお。軽快なドラムはセッションミュージシャンの滝本季延。こうしたノリのいい夏系楽曲は松原正樹のギターはホントぴったりです。
エンディングの松田聖子のハミングとギターの絡み・・・、素晴らしい。
5年後に発表されたプリンセスプリンセスの「世界でいちばん熱い夏」、絶対にこの曲にインスパイアされて作ったと思いますが、如何でしょうか??

私のお気に入りのナンバーは⑨「水色の朝」。作詞:松本隆、作曲:財津和夫。
⑧「赤いスイートピー」の余韻も冷めやらぬなか、豊潤なコーラが・・・。どこか初期TUBEのようなコーラス。
非常にメロウでアコースティックなナンバーなんですね。ちょっとハスキーな(声を使いすぎたためでしょうか?)、松田聖子のヴォーカルが素晴らしい。気だるい昼下がりに聴いていたい1曲。
素晴らしいアコギのソロはもちろん名手、吉川忠英です。

このアルバムも全曲作詞は松本隆で、作曲はユーミン、来生たかお、原田真二、財津和夫のオール・ニューミュージック・スターズ。ある意味、本作で松田聖子の初期サウンドプロダクションのひとつの頂点を極めたのかもしれません。素晴らしい名盤です。

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