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James Taylor「JT」(1977)

本作は私の大好きなジェームス・テイラーのコロンビア移籍第一弾のアルバム。それまでの「Walking Man」「Gorilla」「In The Pocket」はAOR系サウンドに寄りで、NY系ミュージシャンを器用したり、プロデューサーをデビュー当時からの盟友ピーター・アッシャーからデビッド・スピノザやレニー・ワロンカー、ラス・タイトルマン等に変えたりと、様々な試みをしておりました。しかしJT的には心機一転、気持ちを変えたかったのか、契約更改のタイミングでワーナーからコロンビアへ移籍します。実際はコロンビアから高額な契約金を提示されたから…という事情はあるのですが…(これは後に別の事象を生んでしまいます)。

本作ではタイトルをシンプルに「JT」とし、プロデューサーをピーター・アッシャー、バンドはザ・セクションを中心とした初期の布陣に戻りました。こうした居心地のよいメンバーとやりたかったのでしょうね。私としては前述の3部作は結構好きなんですけどね…。ジャケットのアートデザインはジョン・コッシュが担当。

稲垣潤一の「J.I.」はこちらのジャケット、タイトルをパクったものですね。

アルバムトップを飾るナンバーは、JTが娘のために書いた、ちょっとAOR風な①「Your Smiling Face」。
JTの楽曲にしてはエレキギターのリフが強調された、少しロック色も感じられるナンバー。但しメロディは完全にJT節で、私の大好きなナンバーです。
こうして少しロック色が感じられるのは、ザ・セクションのメンバーの演奏がタイトだからと思われます。アップしたライブ映像をご覧頂ければ、何となくそれがお分かり頂けるのではないでしょうか。

JTがカントリーミュージックに挑戦したナンバーの⑤「Bartender's Blues」。
過去にこれほどカントリー色が感じられたJTナンバーは無かったかもしれません。カントリーミュージックを演奏するバーであるホンキートンクそのものを歌ってますしね。哀愁漂うスティールギターはダン・ダグモア。ダニー・コーチマーのギターソロもいい味出してます。そしてもちろん一緒に歌っているのはリンダ・ロンシュタット。やはりこうしたカントリーは当時の奥様であるカーリー・サイモンよりリンダの方が合ってますね。

フォーキーで優しいメロディを持つ⑥「Secret O' Life」は私のお気に入りの楽曲。
このアルバムは1曲目とか、ダニー作の③に代表されるように、ロック色の濃いアルバムというイメージが強かったのですが、実際はこの曲のように、やっぱりJTらしい楽曲が揃っております。
それにしてもJTってギターが上手いですね。この曲のアコギもいい音で鳴ってますし、なによりJTの声が暖かい…。癒しの1曲ですね。
アップしたライブではドン・グロルニックの弾くエレピとリーランド・スカラーのベースが実にメロディアス。

JTはカバーの名手でもありました。本作でも1959年のジミー・ジョーンズのヒット曲⑦「Handy Man」を全く別のアレンジでカバーしております。
この曲、カバーということを知らなければ、JTのオリジナル曲とも思ってしまうくらいに見事に料理してますね。
原曲はニール・セダカのカレンダー・ガールを思わせるようなダンスナンバー。全く別の曲に聞こえてしまいます。JTが歌ったような、ちょっとほろ苦いようなメロディは微塵も感じられません。JTのアレンジ能力に脱帽します。

一応ジミー・ジョーンズの原曲もアップしておきます。

カーリー・サイモンとの共作の⑩「Terra Nova」はストーリーテラーなJTらしい楽曲。
ふたりのセイリングを歌ったもの。歌詞の通り、この頃がカーリーとの蜜月時代のピークだったのではないでしょうか。カーリーのハーモニーも息がピッタリ。
リズミカルな楽曲ですが、地味にバックのザ・セクションの演奏が素晴らしい。そしてこの曲の魅力はやはりエンディングでのカーリーを中心に歌われるエンディングパートではないでしょうか。讃美歌のような清らかなで神聖な雰囲気がします。

この後、引き抜き合戦とばかりに、ポール・サイモンがコロンビアからワーナーへ移籍します。ワーナーの逆襲とみる方々もいたようですね。
そしてその後、たまたまの偶然と思いますが、騒動の二人、ジェームス・テイラーとポール・サイモン、そしてアート・ガーファンクルは3人で「(What A) Wonderful World」を発表します。これもハートウォーミングなカバーでいいんですよね。こちらを最後にアップしておきます。


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