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濱田金吾「midnight cruisin'」(1982)

レココレ9月号は「シティ・ポップの再定義」と題した特集でしたが、相変わらず賛否両論ありますね~。ここには127枚の再定義されたシティポップのアルバムが紹介されてますが、さすがに近藤真彦、少女隊、44マグナムまでセレクトされているのはどうかなあ~と。かなり確信犯的な感じもしますが…。
でも往年の定番アルバムもピックアップされてまして、その中の一枚…、今回初めて聴いてかなりハマってしまったアルバム、浜田金吾の「midnight cruisin'」をご紹介致します。

同時期に同じ浜田のハマショーこと浜田省吾がヒットを飛ばしていたので、当時「浜田といえば金吾です」といった恥ずかしいキャッチフレーズが使われていたらしい。私も確かに浜田といえば省吾だと思ってました(笑)。実際濱田金吾(この当時は浜田金吾)のアルバムは今の今まで未聴だったんですよね…。今回、レココレでジャケットが大きく扱われていたので、ついついチェックしてしまったのですが、コレが実にいいのです。

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デビュー当時、浜田金吾は敏腕プロデューサーの小杉理宇造氏がRCA内に設立したAir Recordに所属します。当時作曲家として売り出していた浜田金吾を、小杉氏がデビューを持ちかけたらしい。小杉氏はRCA時代に山下達郎を見出した伝説のプロデューサー。近藤真彦をヒットに導いた方でもあります(ここでピンと来た方は鋭い…、達郎さんがマッチに曲を提供したのは、小杉氏の縁によるもの)。小杉氏も、浜田金吾の音楽にどことなく達郎さんフレーヴァーが感じるものがあったのかもしれません。

本作は1982年に発表した浜田金吾4枚目のアルバム。都会の夜をテーマに、作詞に康珍化、小林和子、来生えつこ、及川恒平を迎え、全曲浜田金吾が作曲、倉田信雄のアレンジで、極上のシティポップを聴かせてくれます。
それではまずは私が深く吸い込まれた1曲をご紹介致します。それが②「横顔のタクシードライバー」。
若き日に友人と夢を追いかけていた日々。あれから時が過ぎ、偶然街中でタクシードライバーの友人を見つけます。友人は今も熱い想いを持っているのだろうか、昔のカセットを聴きながら当時に想いを馳せ、今をしっかり生きていく…、浜田金吾の優しくも切ないヴォーカルとメロディの載せて、康珍化が紡ぎだすそんなストーリーが語られていきます。
この歳になって分かる素晴らしい詞と絶妙なメロディ。殆ど知られていない曲ですが、浜田金吾、一世一代の名曲。あまりにも素晴らしい詞なので、是非この詞を味わいながら曲を聴いてほしい。

(作詞:康珍化、作曲:浜田金吾)
インターチェンジを過ぎた辺りは 信号待ちの車が増える
ワイパー透かしてすれ違いざま 横顔だけでお前と分かった
夏が来るたびジープ借りて 海辺飛ばしたものさ
タクシードライバー 窓を横切る空は今も青いだろうか
俺は昔のカセット流し 過ぎた月日を数えた

仲間はほとんど結婚したし 馴染みの店も今はないけど
若さが絵にした夢もいつしか 燃え尽きたなら灰になるのか
ゲームみたいに生きていたよ 振り向くことも忘れて
タクシードライバー タイヤドリフトさせて雨のカーブを急ぐ
俺はクラクション軽く鳴らし バックミラーで見送る

タクシードライバー 窓を横切る空は今も青いだろうか
俺は昔のカセット流し 過ぎた月日を数えた

コーラスの多重録音アレンジは明らかにビリー・ジョエルの「Just The Way You Are」を意識したもの。間奏のフルートも効果的で素晴らしい。
タクシー運転手の友人は冴えない顔をしていたのだろうか、それとも相変わらずの様子だったのだろうか。今は馴染みの店もないけど、久しぶりの友人は相変わらずだったのではないでしょうか。ついつい嬉しくなり、スピードを上げて、ダイヤドリフトさせて軽くクラクションを鳴らしたのではないでしょうか。

あ~、ついついこんなに文字数を使ってしまいました(笑)。すみません、しばらくお付き合いください。
スィートなバラードの③「So,I Love You」。
この時代のニューミュージックという感じですが、サビだけはAOR&シティ・ポップしてます。このサビのアレンジは海外のAORを思わせますね。それ以外のメロディは日本人好みの典型的な泣かせるメロディ。夜のバラードですね~。

元々は1979年にティミーという女性歌手に提供したセルフカバーの④「街のドルフィン」。
実はこの曲がワールドワイドにバズったらしい。海外からは日本のシティ・ポップの代表的な1曲と思われている様子。元々はアメリカのビートメイカーのEngelwoodが2017年に「Crystal Dolphin」としてアップ。2021年にはオフィシャルMVもアップ。確かにこの曲のYouTubeのコメントは異様に海外からのものばかり。凄い!
曲自体は山下達郎の「Let's Dance Baby」を思わせるアレンジ。リズム隊はベース松本茂&ドラム菊池丈夫の名演。歌詞に ♪ パイプくゆらせ~ ♪ って出てくるところを聴くと、私には「林檎殺人事件」を思い出しちゃいます(笑)。

Engelwoodのバージョンもアップしておきます。

レゲエのリズムをベースとした⑦「せめてからりと晴れてくれ」の作詞は来生えつこ。
夜のアルバムですが、この曲のホーンは暑い午後を連想させますね。松下誠のいぶし銀のギターもカッコいい。アレンジが洒落てます。

名バラードの⑨「真夜中のテニスコート」も②「横顔のタクシードライバー」と同様に小林和子の作詞。
このテの切ないバラードは浜田金吾の十八番ですね。こちらも「横顔のタクシードライバー」と同様、若いころの思い出に耽る切ないバラード。タクシードライバーは友人という設定ですが、こちらは彼女でしょうか。

この頃のシティ・ポップ、やっぱりいいですね~。濱田金吾の他のアルバムもチェックしてみよう。

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