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Jeff Beck「There and Back」(1980)

ジェフ・ベックが我々の前から唐突に逝ってしまった。直前の容態は家族にしか分かりませんが、少なくともジョニー・デップとの共演ライブは11月も普通に行われていたと記憶しています。だから多くの訃報に接してきているロック・ファンも、ジェフの訃報には驚愕・動揺、そして信じられない思いなのではないでしょうか。

私はジェフにはそれほど深い思いはなかったのですが、昨年発表された私が大好きなビーチボーイズの「Caroline, No」のカバー演奏に深く感銘を受け、これほどエモーショナルにギターを弾くギタリストはいないと(今更ながら)強く感じ、フュージョン期のジェフを聴き直していたところでした…。ジェフは昔も今も全くやっていることに変わりはないんですよね。

我々が洋楽を聴き始めた頃は既にエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベックの三大ギタリストという定義付けが為されておりました。三者三様、それぞれ違う魅力を放ったギタリストですが、中でもジェフはトリッキーで華麗で、よりエモーショナルなプレイをする方というイメージでした。実際ジェフは他の2人よりもコンポーズした曲は圧倒的に少なく、その楽曲の良さをギターで如何に引き出すか…に専念しているように見受けられましたね。

今回、実は別のグループのアルバムをご紹介する予定だったのですが、ジェフのギターの素晴らしさをご紹介することで、彼を追悼したいと思います。

本作はジェフ・ベックの3枚目のソロアルバムであり、フュージョン三部作「Blow By Blow」「Wired」に続く最終作品であります。前2作でパートナーだったヤン・ハマーと、新たにドラムにサイモン・フィリップスを招聘し、制作を開始したものの、どうもジェフ的にはしっくり来なかったようで、ヤン・ハマーの代わりにジャック・ブルースと共演実績のあったトニー・ハイマスと組み、本作を仕上げました。ちなみにベースは元アフィニティーに在籍していたモ・フォスター。サイモン&モーのリズム隊は本作が発表された頃、マイケル・シェンカー・グループのデビューアルバムにも携わっておりますね。

本作には日本人には馴染み深い曲がオープニングナンバーとなっております。それがヤン・ハマー作の①「Star Cycle 」。
私は全く記憶にないのですが、当時流行っていたTV「ワールドプロレスリング」にBGMとして使われていたらしい。イントロからヤン・ハマーらしいシンセが…、そしてこの曲のドラムはヤン・ハマー自身。彼は幼少期からドラムも習っていたようですね。昔はあまりこの曲の凄さが理解出来ませんでしたが、ジェフのギター・トーン、変幻自在、凄いです…。
アップした映像は1983年のライブ映像。サイモン・フィリップスが笑いながら叩いてます。映像で彼がオープン・スタイル(左手でハイハット、右手でスネアを叩く)であることがよく分かりますね。

①~③まではヤンとの共同作業です。ヤン作の③「You Never Know」はファンク・チューン。
2007年11月のロンドンのジャズクラブ、ロニー・スコッツでの演奏をアップしておきます。ベースはタル・ウィルケンフェルド。当時、なんと21歳!!ドラムは名手、ヴィニー・カリウタ、キーボードはジェイソン・リベロ。21歳の女の子のベースに、当時63歳のジェフが絡む…、年齢など関係ない熱いバトルですね。
https://www.youtube.com/watch?v=B-7YEtl-cfw

トニー・ハイマス&サイモン・フィリップス作の④「The Pump」。以下④~⑦はすべてトニー&サイモンの作品。
こちらの映像はドラムがサイモン・フィリップス。このタイトな楽曲は、一時期のラリー・カールトンっぽい曲調。実際、あとで分かったのですが、この曲、Larry Carlton & Steve Lukater Bandがカバーしていたんですよね。この映像もYouTubeにあり、見てみると、ジェフが如何にエモーショナルなプレイか、ラリーやルークとジェフの違いがよく分かります。ジェフの右手のギターの弾き方、とても特徴的ですよね。アームの使い方とか、実にトリッキーだし。

トニーの華麗なキーボードで始まる⑤「El Becko」は本作中、一番分かりやすくてカッコいいナンバーじゃないでしょうか。
55秒辺りから突然ロック調に変わっていきます。そこから1分16秒辺りでジェフの分かりやすいギターが…、これが実にカッコいい。8ビートロックなのに、サイモンの手数の多いドラムが彩りを添えてくれてます。ロック調のところはサイモンが作ったのでしょうかね。ジェフがそれほど優れたコンポーザーではない一方で、ドラマーであるサイモンが、なかなか優れたソングライティング・センスを持っている点はちょっと意外でした。

本作中、最大のハイライトが⑦「Space Boogie」でしょう。手数の多いサイモン・フィリップスの本領発揮…。個人的にはこうした手数の多いドラミングってあまり好きじゃないんですけどね。
これはサイモン&トニーでないと出せないフィーリングかと思ったら、アップした映像(③でアップした映像と同じクラブハウス)のヴィニーとジェイソン…、そしてタルが完璧に演奏しております。ジェフの変態演奏も凄いですが、ヴィニーのドラムも爆発してます!ジェイソンのジャズ的プレイもカッコいい!!
このクラブ、200名ほどの小規模キャパのようで、当時、ブライアン・メイやジョン・ボン・ジョヴィ、トニー・アイオミ、ジョー・サトリアーニ、そしてロバート・プラントやジミー・ペイジまで見に来ていたらしい。この超絶プレイを間近で見ていた観客…羨ましい。

如何だったでしょうか。こんな素晴らしいプレイがもう見れないなんて…。最期にジェフの名演「Caroline, No」をお聴きください。まだまだ現役のプレイです。本当に惜しい方を亡くしました。R.I.P.


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