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The Beatles「Abby Road」(1969)

このビートルズの「アビーロード」、私の大好きなアルバムです。
洋楽を聴き始めた中学生の頃、初期のビートルズ(「A Hard Days Night」あたりまで)が大好きで、どちらかというと中期以降のビートルズは大人の香りのする音楽というイメージでした。
あれから40年が経過し、今ではあまり初期のビートルズの音楽って聴く機会がなく、むしろ中期以降のビートルスを好んで聴いております。特にこの「アビーロード」、ポール好きの私にとってはポールが渾身の力を振り絞って制作した様子が伝わってきて、感動すら覚えてしまうアルバムなのです。

1969年、ビートルズはゲットバック・セッションが終わり、もうメンバー間の仲も修復不能というところまで来ていたのは明らかでしたが、最後の1枚(とメンバーは思っていたのでしょう)を収録すべく、7月よりアビーロードスタジオに籠もり、この実質的なラストアルバムを仕上げたのでした。

ラストアルバムというと、やはりトップナンバーは商業的なヒットが狙えるような楽曲を持ってくるのと思いますが、やっぱりビートルズは違います。恐らくはシングルヒットとは無縁ではありますが、恐ろしくヘビーでかっこいい①「Come Together」、この曲がトップなんですよね。しかも歌詞は難解極まる内容。
私はこの楽曲のリンゴのドラムが大好きなのです。リンゴ独特のオフビートなドラミングがこの曲にぴったりで、ヘビーなタムまわしなんか、実にカッコイイ。そしてジョンのブレス音やポールのベース。どれもがロック魂を感じさせるのです。これがビートルズの底力なんですね。

そして2曲目にして感動的なナンバーの②「Something」。ジョージの一世一代の名バラード。気品さえ漂うイントロ。サビは感動的だし、バックの盛り上げるリンゴのドラミングがまた素晴らしい。相変わらずメロディアスなポールのベースが冴え渡ってますね。
ジョンとポールに隠れがちだったジョージが、ついに一級品のソングライターであったことが証明された1曲。

シンプルな④「Oh! Darling」。ポールのシャウト、ファルセットヴォイスが堪能できる1曲。ポール自身もこの曲のヴォーカルには拘っていたらしい。

5曲目にして、ついにリンゴの名作が登場。ヴォーカルもリンゴなら作詞作曲もリンゴの⑤「Octopus's Garden」。
リンゴは殆ど曲は作りませんが、これは「アビーロード」という超一級品のアルバムのなかに収録されていても、決して遜色のない出来栄えです。というか3人のビートルのハーモニーに助けられているという感もなきにしもあらず(笑)。

ジョージの名作はもう1曲収録されてます。それが⑦「Here Comes The Sun」。
これがまたいいんですよね。アコギを買った時に、この曲のイントロをよく弾いてました。ジョージがエリック・クラプトンの家の庭で日向ぼっこをしているときに作った曲として有名で、太陽に憧れる英国人らしい1曲。アコギの心地よい響きが素晴らしい。

後半のメドレーは「ホワイトアルバム」で見せた宝石箱のような楽曲集を、凝集したような印象を受けます。「アビーロード」というアルバムの、別の意味でのハイライトかもしれません。これでもか、これでもかと、次から次へのメロディが紡ぎだされます。
トップの「You Never Give Me Your Money」自体が組曲みたいですが、いいメロディですね。
これだけ素晴らしいものを作り上げた彼等の達成感、相当なものだった筈です。ジョンの「Sun King」の美し過ぎるコーラスはその達成感のひとつの極みかもしれません。

そしてビートルズは「The End」というフィナーレを飾る楽曲をエンディングに持ってきます(この後、シークレットトラックの「Her Majesty」がありますが)。
この曲が哀愁を微塵も感じさせない素晴らしいロックなんですよね。リンゴのソロや3人のギターソロまで収録されているサービス精神。これぞビートルズ流のロックなのでしょう。感動的なフィナーレだと思います。

こうした素晴らしいアルバムを作っておいて解散してしまうなんて、勿体無い話ですが、メンバー間はそこまで限界が来ていたのでしょう。その限界感のなかでこそ作り得たアルバム、それが出来たことこそが、ビートルズが偉大であった証左でしょうね。

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