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今剛「Studio Cat」(1980)

80年代前半の日本のセッション・ギタリストで一番忙しかったのは松原正樹さんと今剛さんだったのではないでしょうか?
私自身は松原正樹さんのプレイが大好きなのですが、寺尾聡の楽曲を聴くにつれ、今さんの魅力にハマり、彼のソロアルバムにも関心が向かい、チェックしてみたところ、これが実に素晴らしいんですよね。また面白い発見もあったので、早速記事に取り纏めました。

寺尾聡の名盤「Reflections」が発表されたのが1981年。バックを務めたパラシュートのメンバーが注目を集めましたが、その中でも今さんのギタープレイはカッコ良かった。今さんのギターは業界でも徐々に注目を集めていたらしく、「Reflections」の制作前に今さんにソロアルバム制作の話が舞い込んできます。「Reflections」は1980年6月から制作に入るのですが、その直前に渡米。1980年5月、LAのA&Mスタジオで本作を収録します。

メンバーはロバート・ブリル(Ds)、マイク・ダン(B)、マーク・ジョーダン(Key)、マイケル・ボティカー(Syn)。プロデュースは林立夫。マイクはパラシュートのメンバーだし、ロバートも日本のミュージシャンとの交流が深く、今さんとももちろん旧知の間柄。マークは今さんが気になるミュージシャンとして、コーディネーターに依頼、招聘された方(AOR好きな方ならよくご存じですよね)。基本は今・マイク・ロバートの気心のしれた3人がコアに制作されたアルバムです。

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まずはアルバムトップの①「Zig-Zag」をお聞きください。イントロから疾走する今さんのギターが炸裂します。
LAにおける3日目のセッションで録音されたもの。軽快なウエストコーストロックですね。TOTOのスティーヴ・ルカサーとは違い、そのギター・トーンは実にナチュラルで心地いい。当時、今さんがよく聴いていたギタリストはラリー・カールトン、バジー・フェイトン、ジェイ・グレイドンとのこと。なるほど…、納得です。

本作では2曲、ヴォーカル曲が収録されてますが、その内の1曲が②「Think About The Good Times」。ヴォーカルは今さん自身。
本作は基本的にはアレンジも含めて全曲今さんの作品ですが、この作品と⑦「Go Ahead」だけは歌モノということもあり、作詞作曲は別の方。誰かというと、なんとH2Oなんです。そうです、「想い出がいっぱい」のH2Oです。「想い出がいっぱい」のヒットは1983年ですし、そもそもH2Oのレコードデビューは1980年6月なので、まさにこの時はデビュー直前。そのH2Oが、あの今剛に楽曲を提供していたなんて、かなり意外ですよね(これが面白い発見です)。しかも曲調は「想い出がいっぱい」のイメージとはかけ離れたもの。
実はH2Oは林立夫がデビューのサポートをした経緯にあります(お陰でH2Oはアミューズに在籍しておりました)。本作は林さんがプロデュースしている作品なので、ここでも林さんがサポートしていたんでしょうね。でもそういった縁とは関係なく、この曲、いい曲ですね。今さんのジェイ・グレイドンから影響されたと思われるギターも快適だし、サビのメロディも心地いいですね。
(ちなみに「想い出がいっぱい」には今さんがギターで参加してます)

そして今剛さんといえば③「Agatha」ですよね。あまりにも有名な1曲。何の説明も不要な名曲ですね。今さんは優れたギターテクニックはもちろんですが、メロディーメーカーとしても極めて有能なミュージシャン。それがよく分かる楽曲です。
アップした映像はCROSSOVER JAPAN 2004での演奏。もちろん盟友の松原正樹さんとのツインギター。ちなみにこの時のドラムは山木秀夫、キーボードは松原正樹さんの奥さんの南部昌江

夏の昼下がりに聴いていたい⑤「Tootsky Heaven」。
こちらも今さんのメロディーメーカー振りが発揮された1曲。ロバートのドラムが重すぎる気がしますが、殆どライブ感覚で収録されたんでしょうね。林さんが唯一この曲にだけパーカッションで参加しているとのことですが、あまりパーカッションが聞こえませんね。
ちなみに下の写真が中ジャケのメンバーとのフォトセッション。楽しそう。

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もう1曲の歌モノの⑦「Go Ahead」。
ノリのいいロックンロールナンバーですね。ギターもやけに爽やか。
それにしてもコレがH2Oが作った曲とは…。H2Oってホントはこうした楽曲が得意だったのかなあ。あとここで提供された2曲、共に英詞なんですよね。実はH2Oの赤塩正樹は、解散後、1985年に渡米。なんとニューヨーク大学教育学大学院を卒業しております。恐らくもともと英語の実力があったんでしょうね。

今さんはそれほど自己主張が激しくないのか、実はソロアルバムは2枚しか発表しておりません。確かに容姿はインパクトありますが(笑)、バッキングに徹する姿勢はセッション・ミュージシャン・タイプなのかもしれません。
最後に今さんと仲間たちがディープ・パープルの「Burn」を楽しそうに演奏している映像をアップしておきます。今剛と伊藤広規のロックしているプレイ、渡嘉敷祐一の激しいドラミングも見どころですが、やっぱりジョン・ロードしている難波博之が最高です!


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