The Monkees 「Pisces, Aquarius, Capricorn & Jones Ltd.」 (1967)
先日、ちょっとしたご縁で、DJの今泉恵子(現:圭姫子)さんと、SNS上、僅かばかりのご接点を持たせて頂きました。スヌーピー、こと今泉恵子さん、懐かしいです。当時、私はラジオ関東のポップス番組を愛聴しており、特に八木誠さんとスヌーピーがやっていた「全日本ポップス120」が大好きでした。そこでモンキーズの知識も仕入れていたものです。そう、私の洋楽の原点がモンキーズであり、この番組でした。
ということでここ最近、モンキーズのアルバムを聴き返していたのですが、私の大好きなアルバムが「Pisces, Aquarius, Capricorn & Jones Ltd.」。長ったらしいタイトルですよね。コレ、メンバーの星座を表したもので、マイク・ネスミスとディビー・ジョーンズが同じ誕生日(12月30日)で、同じ星座なので、Davy JonesのJonesだけがタイトルに付け加えられてます。
ビートルズに対抗すべく、アメリカのショービズ界が仕掛けたバンドがモンキーズです。そして枕詞のように言われてますが「作られたバンド」なんですよね。ただしメンバーのマイク・ネスミスとピーター・トークはミュージシャン出身だし、バンドとしての自我が目覚めていく中で、レーベルの社長、ドン・カーシュナーとモンキーズが対立(特に3枚目のシングル「恋はちょっぴり」は、メンバーが知らない間に勝手に発売が決まっていたらしい)。結果、レーベルのスクリーン・ジェームス社が、なんと社長のドン・カーシュナーを解任してしまうっていう珍事まで発生。モンキーズは既に大きな力を持つ存在になってしまったんですね。
そんな中で1967年5月に発売されたサードアルバムが「Headquarters」でした。これは殆どの楽器をモンキーズが演奏しているアルバムで、素晴らしい内容なんですね。さすがに演奏はアマチュアバンド風なものもありますが…。
で、その次に発表されたアルバムが本作。前作に続いてプロデューサーはチップ・ダグラス。引き続きメンバー中心の演奏ですが、一部スタジオミュージシャンが演奏しております。その分、よりカッチリした印象を受けるアルバムです。
まずはアルバムトップは①「Salesman」。マイク・ネスミスのヴォーカルなので、マイクの作品かと思いきや、マイクの友人Craig Smithの作品。エレキギターはマイク、アコギがピーター・トーク。特徴あるメロディアスなベースはプロデューサーでもあるチップ・ダグラス。チップ・ダグラスって、モダン・フォーク・カルテットで名を馳せた人物で、後にタートルズに加入し、「Happy Together」では実質的なプロデュースを手掛け、名声を手にします。ちなみにここでのベース同様に、軽快なドラムを叩いているエディ・ホーも著名なスタジオミュージシャンで、チップと同じく元MFQのメンバーです。
私の大好きな1曲の③「The Door into Summer」もマイクがリードヴォーカルを務めるナンバー。モンキーズのリードヴォーカルはディビーかミッキー・ドレンツが定番ですが、このアルバムでは実はマイクが全13曲中、5曲もリードを取ってます。音楽的性能に優れたマイクがイニシアティブを取り始めたとも言えなくもないです。
チップ・ダグラスとビル・マーティンの共作。ドラムはエディ・ホーですが、ミッキーもクレジットされてます。セカンドバースからドラムがダブルトラックとなるので、そこでミッキーが叩いていると思われます。ちょっとクールなキーボードはピーター・トーク。もちろん曲名は、ロバート・ハインラインの同名作品本から取られたタイトルです。60年代後期の秀逸はポップスですね。
ハリー・ニルソンの作品として有名な⑤「Cuddly Toy」。こうした軽快なポップスナンバーのリードヴォーカルは、ディビーがピッタリ。アップした映像の通り、ギターはマイク、ピアノがピーター、ドラムはミッキーです。最近亡くなられてしまいましたが、ピーターのピアノの腕前もなかなかのものです。
モンキーズのパートナーともいえるボイス&ハートの作品の⑥「Words」は、邦題「恋の合言葉」として有名な作品。後にご紹介する「Pleasant Valley Sunday」と両A面扱いでシングル発売された、この当時流行っていたサイケ感覚満載のスリリングなナンバーです。
アップした映像の通り、リードはミッキー。コーラスはピーター。デイビーがドラムを叩いてますが、実際のドラムはミッキー。ピーターはギターを弾いてますが、実際はベースとハモンドオルガンを弾いてます。なかなか時代を反映した名曲かと思います。
すべてのモンキーズの作品のなかでも、マイベスト5に数えられるナンバーが⑦「Hard To Believe」。この曲を知っている人って殆どいないと思います。アルバムの中の地味な1曲なので。でもとても秀逸なポップスナンバーだと思ってます。リードヴォーカルのディビーと新進気鋭のKim Capli等の作品。実にメロディアスなメロディにリズムがボッサというアレンジがお気に入りです。ベースラインも素敵です。実はこのバックの演奏、ほとんどすべてが作者のKim Capliという方。ドラムやベース、ギター、全てです。トルコのミュージシャンのようで、当時はThe Sundowners、つまりモンキーズのコンサートの前座をやっていたバンドなんですが、ここに在籍していたらしい。だから作品提供出来たんですね。
一瞬マイクのオリジナル作品か…と思ってしまうほど、軽快なカントリーナンバーの⑧「What Am I Doing Hangin' 'Round?」は、マイクとは旧友のMichael Martin MurpheyとOwens Castlemanの作品。素晴らしいカントリーソングです。
マイケル・マーフィーは今ではカントリー界の大御所として君臨している方。この当時はまだまだ駆け出しの存在だった筈で、マイクが(作品も素晴らしかったとは思いますが)敢えて友人のナンバーを取り上げたものと推察します。ここでのバンジョーはダグ・ディラードです。
ジェリーゴフィンとキャロル・キングの作品の⑩「Pleasant Valley Sunday」。キャロル・キングは後に大成したシンガーソングライターですね。実はキャロルもモンキーズに結構楽曲提供してます。その中でもこの曲は、ガレージロック風の名曲かと。ラガロック風のギターなんか、最高ですね~。このギターもマイクが演奏してます。モンキーズは演奏出来ない…なんて言われてますが、実は決してそんなことはありませんし、特にマイクとピーターは相当な実力者です。
ちなみにキャロル自身がセルフカバーした映像もありましたので、アップしておきます(こっちも最高!)。
マイクの作品が続きます。⑪「Daily Nightly」はミッキーが使い方も分からずに購入、弾いたムーグがいい味出してます。所謂サイケ・ソング。続く⑫「Don't Call On Me」はパーティー会場の効果音がイントロとエンディングで使われたムーディーな楽曲。リードヴォーカルはマイク。両曲共、こちらもマイク本来のカントリーソングではありません。マイクの懐の深さが分かります。
エンディングはジェリー・ゴフィンとキャロル・キングが作った⑬「Star Collector」。こちらもムーグが効果的に使われております。それもそのはず、演奏しているのはムーグを販売していたポール・ビーヴァ―。またオルガンはピーターです。この曲はムーグが最初に本格的に使われた楽曲としても有名で、特にエンディングにかけてはサイケ感覚スゴイですね。
時代を反映した素晴らしいアルバムです。モンキーズというと作られたバンド、演奏の出来ないバンドのイメージが強いのですが、秀逸なアルバムを残しております。
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