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杉真理「STARGAZER」(1983)

今年の夏は例年以上に暑かったですね…。ついついTUBEを聴く頻度が上がりました(笑)。毎年この時期にはTUBEを聴き返して学生時代を懐かしむのですが、今年は特に80年代に私が愛したシンガーソングライター、山下達郎、村田和人、佐野元春、杉真理、大江千里…なんかをよく聴いてました。

恐らく山下達郎~佐野元春辺りまでは洋楽ロックファンでもお好きな方は結構いらっしゃると思いますが、杉真理、ましてや大江千里までいってしまうと、もう聴かれている人も皆無かもしれません…。
でも杉真理はナイアガラ・トライアングルでもVol.2のアルバムでメンバーにピックアップされた方ですし、もうちょっとロック寄りの方にも聴かれてもいいんじゃないかなと思ってます。ということで今回は杉真理さんの最高傑作と私が勝手に思っている名盤をご紹介致します。

杉真理というとポール・マッカートニーやギルバート・オサリバンといったメロディメーカーなアーチストを連想してしまいます。個人的には、杉真理は日本でも希代のメロディメーカーじゃないかなと思ってます。そんな彼が実力を十二分に発揮したのが本作。

本作発表の前年、1982年3月に杉真理は大滝詠一、佐野元春と共に「ナイアガラ・トライアングル Vol.2」を発表。その年の10月に「バカンスはいつも雨」がCMソングに使われ、杉真理の名前が一気に一般的に認知されるようになります。そしてその勢いそのままに、5枚目のアルバムとして本作が発表されます。

私が、杉真理の最高傑作じゃないかと思っている楽曲が本作収録の⑪「スクールベルを鳴らせ!」です。アルバムタイトルの「STARGAZER(星を見つめる人)」は、この曲の歌詞から取られてます。
この歌詞はそれぞれいろいろな解釈が出来ると思いますが、私的には子供から大人へ成長するため「あの鐘をならせ」、つまり成長への挑戦と捉え、自分が何かに挑戦するとき、この曲を聴いて自分を鼓舞しております。歌詞、メロディ、アレンジ、バックの演奏、どれもが素晴らしいJ-POPの見本のような楽曲です。
この曲、ギターがいい音させていると思いませんか?ギターはナイアガラには欠かせない鈴木茂。間奏にカッコいいフィルインが入るシャープなドラムは島村英二です。

本作中、一番ご機嫌なロックンロールが③「素敵なサマーデイズ」かもしれません。コーラスなんかは完全にビーチボーイズへのオマージュが感じられるナンバー。特に間奏部分はグッド・バイブレーションの頃のビーチボーイズのコーラスを連想させます。堪りませんね~。
作風が60年代マージービート風ポップスに一番近い日本のSSWは杉真理かもしれません(竹内まりやさんもかなり近いですし、お二人は慶応の学生時代にマリ&レッドストライプスを結成していたことは有名な話ですね)。

感傷的なメロディの⑥「内気なジュリエット」は人気の高いJ-POPナンバー。印象的なスライドギターっぽいギターはこちらも鈴木茂。杉さんお得意のキュートなポップス。こうした楽曲を書かせたら、杉真理に敵う方っていないですね。内気なジュリエットというタイトル・歌詞も杉さんらしい。
コーラスにはもう一人のナイアガラの佐野元春が参加。エンディングのビートルズ風なコーラスは佐野さんと相談してこのようなアレンジにしたとのこと。硬派な佐野さんも、ポップスが好きというバックグラウンドは杉さんと一緒かもしれませんね。

こちらもある有名アーチストがコーラスで参加しているモータウン風な⑦「サスピション」。かなりR&B色の濃いナンバーですが、杉さんの優しいヴォーカルのせいか、ポップスに聞こえます。曲本来はソウルフルな楽曲なので、この声の太い方がコーラスで加わると、完全に杉さんの色が消されてしまいますね(笑)。アップした音源、ちょっと聴きづらいですが、どなたがコーラスしているか、分かりますよね?

桜が舞い散る頃、聴きたくなる⑨「春がきて君は…」は詞が胸に染みます。フォークギター1本でサラッと書き上げたような曲ですが、メロディと詞が素晴らしい名曲。こういう曲を聴くと、ポール・マッカートニーに似ているなあと感じます。

 ♪ 何度もさよならを いいかけたけど 本当に離れるとは 思わなかったよ ♪

ここでの杉さんのヴォーカルは、原田真二のようにも聞こえますね。後段のオーケストラ・アレンジにもグッと来ます。

⑩「バカンスはいつも雨」を聴くと、堀ちえみを連想してしまいます。
てっきり彼女がこの曲をカバーしていたのかと思ったら、彼女が出演していたCMのBGMにこの曲が使われていたんですね。思い出しました…。
CMで使われている駅舎は、JR上越線の岩本駅の旧駅舎。CMでは岩本駅を美里駅に変えられてますが。

このセシルチョコレートのCM、後に私の大好きだった岡田有希子も出演しております。話が本論とはズレますが、そちらもアップしておきます。

杉真理の音楽は完全にポップス寄りで、硬派な洋楽ファンからは敬遠されがちですが、杉さん自身は優れたライターで、竹内まりやや須藤薫等、多くのアーチストに楽曲提供しております。杉さんはプロデビュー後、まりやさんに「プロにならないの?」と聞いた際には、まりやさん「通訳になりたい」と仰ったらしいですが、その後すぐに杉さんは病気で入院してしまいます。そしてその間にまりやさんがプロデビュー。早速まりやさんは杉さんに曲をリクエストし、杉さんは初めて他人に楽曲提供した次第。
人のご縁というのは大事にしていきたいものですね。

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