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松田聖子「Silhouette」3rd (1981)

松田聖子のサードアルバム。当時の帯には「扉をあけたら、もうひとりの私…聖子」とありました。前2作までは作詞:三浦徳子、作曲:小田裕一郎が殆どの楽曲を作ってましたが、本作より、いよいよニューミュージック界とのクロスオーバーが始まります。そして本作は「チェリーブラッサム」と「夏の扉」という初期松田聖子の2大ロックチューンが収録されてます。そういった意味では洋楽好きの私も、本作は実は名盤だと思っております。

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彼女を発掘したディレクターが当時CBSソニーに在籍していた若松宗雄氏。実は私、20年以上前に仕事で彼にお会いしたことがございます。当時は彼の名前も存じてなく、本人が「松田聖子を育てたのは私だ」と仰ったことに信じられない思いでした。

1978年、当時16歳の蒲池法子(後の松田聖子)の声に惚れ込み、猛烈に芸能界入りを進めたのが若松氏でしたが、当時は彼女の魅力に気づいた人物は少数派だったようです。声に魅力を感じたものの、そのO脚を理由にスカウトしなかった渡辺プロ。また所属事務所のサン・ミュージックですら、松田聖子のデビュー曲「裸足の季節」をCMソングに起用させたものの、CMに出演したのは山田由紀子というモデルで、松田聖子の容姿には注目しなかったようです。
そういった意味では若松氏の松田聖子の大成功に対する貢献は非常に大きいものがあります。また彼女の初期アルバム(本作から)は、財津和夫、松任谷由実、松本隆などニューミュージックシーンのミュージシャン達が楽曲提供しており、そのクオリティは非常に高く、彼女の「キャンディ・ヴォイス」と非常に合致した世界観が繰り広げられてます。これらも若松氏の手腕によるものなのでしょうか?とにかく松田聖子のサウンド・プロダクションはマーケティング・センスが秀逸で素敵です。

①「Summer Beach~オレンジの香り~」はビーチボーイズ風のロックンロールで、個人的には松田聖子の魅力があまり引き出せていない楽曲のように感じます。声質も別人のように聞こえます。作曲は小田裕一郎氏ですが、杉真理風。この曲は、まだまだファースト、セカンド路線を継承しておりますね。

むしろ②「白い貝のブローチ」がアルバムトップの楽曲に合っているような気がします。
作詞:松本隆、作曲:財津和夫、ドラムは島村英二、ギターは芳野藤丸(SHOGUN)と吉川忠英・・・。贅沢ですね。彼女の得意とするミディアムテンポのリゾートソング。この曲を聴きながら、ゆったりと車を走らせたいものです。

③「Sailing」は財津和夫が作詞作曲したナンバー。
AORの影響が窺えます。特にこのキーボードリフは一世を風靡したマイケル・マクドナルト的なもの。アレンジは松田聖子の盟友となっていく大村雅朗。隠れた名曲だと思うのですが、如何でしょう?

言わずと知れた名曲⑤「チェリーブラッサム」。4枚目のシングルであり、財津和夫が初めて提供した楽曲でもあります。
アイドルの楽曲なのにギターが妙に唸りをあげてます。もちろんギターはPARACHUTEの今剛。間奏のギターソロ・・・、ジェイ・グレイドンばりのハーモナイズド・ギター。いや~、かっこいいですね。

80年代アイドルポップの最高峰の楽曲と思っている⑧「夏の扉」。当時からこの曲と次のシングル「白いパラソル」が大好きでした。両方とも作詞:三浦徳子、作曲:財津和夫、そして編曲は大村雅朗
イントロからして煌びやかなキーボードが眩しく、如何にも夏の扉を開ける様子が目に浮かびます。ここでのギターもかっこいい。ギターは今剛と、なんと鈴木茂。ドラムもかなり前のめりにロックしてますね。とくにギターソロにおけるフィルイン、豪快な3連フィルを聴かせてくれます。これは歌謡曲というよりロックですね。
富倉安生のチョッパーベースもロックの香りがします。
Amazonのアルバム評を拝見しても、このアルバムはロックアルバムであると評していらっしゃる方がおられました。その通りだと思いますね。

「夏の扉」から一転、これぞアイドルポップの極み⑨「花びら」。
メロディ自体はすごく単純なものですが、アレンジが素晴らしく、一気に聴かせてくれます。エンディングでは華やかなストリングスが登場してくるし、聞き手を飽きさせません。
アレンジは大村雅朗氏。その大村氏も急逝されていらっしゃったんですね。

やっぱり初期の彼女のアルバム(~8枚目「Canary」あたりまで)は秀逸ですね。未だに中古でも高値で売られているのは納得です。それからやっぱり松田聖子、歌が上手い。実は表現力も素晴らしく、また何といっても声が魅力的。確か「風立ちぬ」辺りで声を潰してしまったらしいので、以降、微妙に唱法が変わっていきますが、この当時は元気印ですね~。あれから30年近くが経とうとしていますが、彼女ほど声に魅力のある歌手もいないのではないでしょうか?

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