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ブレッド&バター「Late Late Summer」(1979)

こちらでは洋楽中心に勝手気ままに好きな音楽を綴っておりますが、実は邦楽も大好きです。特に70年代~80年代の日本のロック・歌謡曲・ニューミュージックはかなり好みなんですよね。ですからこの辺りの情報には飢えております(笑)。
先日、ご紹介を受けた「昭和40年男 12月号」という雑誌の「俺たちニューミュージック世代」という特集記事にも同様の匂いを感じ、早速購入、熟読しております。

あの当時のスターだったアリス、渡辺真知子、尾崎亜美のインタビューはもちろん、裏方のキーマンだった方々のインタビューなんかはマニア心をくすぐられますね~。レココレでもたまにこの分野はフォーカスされますが、こうした記事は自分の知識の棚卸に有益なので助かります。

ちなみにこの記事には「名盤アルバムコレクション1976-1979」に27枚のアルバムがご紹介されてますが、これもまたナイス・セレクト。ということで今回はこの中から、あまりにも有名過ぎて恐縮ですが、ブレッド&バターの名盤をチョイスしました。

ブレッド&バター(ブレバタ)は岩沢兄弟のフォークデュオで、その活動歴は長く、1969年から現在まで活動を続けておられます。

正直、岩沢さんのちょっと線が細く頼りないヴォーカルが苦手でもあったのですが、よく考えたらこの声質は、大江千里→小沢健二→星野源へと受け継がれており、実は私は彼等全員が大好きなので、ブレバタもOKじゃないかと勝手に思い始めてます。

さて本作ですが、1979年にリリースした通算4枚目、アルファ・レーベル移籍第一弾となったアルバムです。楽曲の殆どのリズム・アレンジを細野晴臣が手掛けております。もともとブレバタはキャラメル・ママと交流があり、その流れで本作は細野さんをキーにYMOから坂本龍一(Key)、高橋幸宏(Ds)、ティン・パン・アレー(キャラメル・ママ)から佐藤博(Key)、林立夫(Ds)、鈴木茂(G)が参加。他に小原礼(B)、松原正樹(G)等が参加しております。
いつものことですが、このミュージシャンを見ただけで、購入意欲がそそられます(笑)。

よく本作はスティーリー・ダンからの影響を受けたAOR、シティポップと語られることが多いですが、個人的にはフュージョン・バンドのスタッフからの影響が大きいのでは…と思ってます。その色彩が濃く表れているのが④「The Last Letter」。こちらは高橋幸宏作詞、細野晴臣作曲・編曲。
当時、細野さんは「ポール・サイモンのスティーヴ・ガッドのドラムが大好きで…」と語ってますが、そのままポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」をパクっております(笑)、いやモチーフとしております。もちろんキーとなるのは林立夫の華麗なドラミング。ガッドのドラミングそのままに叩いております。そしてよく聴くと、ドラムのゴーストノートも聴こえますね。あと特筆すべきはギター。コレ、まるでエリック・ゲイルのプレイそっくり。こちらは鈴木茂のプレイかな(クレジットがないので分かりませんが)。そして当然、このフェンダーローズもリチャード・ティーそっくり。つまりこちらの演奏はスタッフそっくりなんですよね。さすがです!

本作のファースト・シングルは①「あの頃のまま」。作詞作曲:呉田軽穂、編曲:細野晴臣・松任谷正佳。曲を聞けば随所にユーミン節が。
ブレバタの代表曲でもありますね。最初は、曲調もヴォーカルも甘すぎる点がどうも好きになれなかったのですが、やっぱり歌詞もメロディもユーミンらしい点が気に入ってます。岩沢さんの声がユーミンの声に聞こえてしょうがない(笑)。意外と声質が似ているかも。

軽快なポップスの②「タバコロード20」は作詞:呉田軽穂、作曲:岩沢幸矢、編曲:細野晴臣・鈴木 茂の作品。
この曲を聴いて、湘南ロード、国道134号を走りたい。イントロからそんな気にさせてくるナンバー。

ソフトボッサの名曲の⑤「渚に行こう」は作詞:伊達歩(伊集院静)、作曲:岩沢二弓、編曲:細野 晴臣・鈴木 茂。
こちらも湘南の海辺でのんびりと聴いていたいナンバー。間奏のスキャットはソフトロック、特にロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ辺りを彷彿させます。個人的にはこのテの音楽が大好きですね~。

タイトルとは真逆の陽気なレゲエ調の⑥「ゆううつ」は作詞:呉田軽穂、作曲:岩沢 幸矢、編曲:細野 晴臣。アレンジが秀逸なナンバー。
南国音楽・エスニックな音楽が大好きな細野さんらしい秀逸なアレンジ。ひょっとしたら岩沢さんが書いた原曲は、全く違った雰囲気の楽曲だったかも。バックのグルーヴィーな演奏も光るナンバーです。

最後にご紹介するのは山下達郎を彷彿させるナンバーの⑧「Summer Blue」。
こちらは作詞:小林和子、作曲:岩沢二弓、編曲:細野 晴臣。乾いたギター、シンコペーションの効いたリズム隊。どれもが初期の達郎さんのサウンドにそっくりと思いませんか。やっぱり細野さんのアレンジは凄いなあ。シティポップの名曲。

本作からのアルファ三部作がブレバタのシティポップの名盤。あとの2枚もじっくり聴き込んでみたいなあ。
それにしてもこうしたAOR系の良作を手掛けていた一方で、テクノポップなYMOとしての活動も成立させていた細野さんはやはり天才。本作はブレッド&バターの持つ優しいメロディとヴォーカルを、細野さんを中心としたミュージシャンがしっかりサポートしている名盤です。

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