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Marvin Gaye「Midnight Love」(1982)

洋楽を聴き始めた1982年、短波放送KYOI(スーパーロック・KYOI)という洋楽専門放送局が放送を開始。日本ではBCLブームも巻き起こっていたこともあり、マニアなリスナーがこの放送局を聴いてました。
(KYOI資料館ご参照)

そしてその曲は遠い遠い、サイパンの地から短波を通じて流れてきました。その曲こそ本作に収録されている②「Sexual Healing」です。この曲を聴くと、あの当時の、ラジオから洋楽の全てを学んだ中学時代を思い出します。

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マーヴィン・ゲイは今更何の説明も要らないでしょう。ニューソウルの先駆者であり、偉大なクリエイターでもありました。
60年代のR&Bモータウン時代、70年代のニューソウル時代、どれも素晴らしい音楽ですね。
一方で先駆者ならでは苦悩もあったマーヴィン。70年代末には税金滞納問題やプライベートでの離婚等により精神的にボロボロになり、1981年に心機一転、ベルギーのオステンドへ移ります。
もう一度、素晴らしい音楽を発表してやろうではないか! そんな意気込みのなか、本作は発表されました。

まず一聴して分かるのは、シンセを多様したチープ感漂うバックミュージック。これは優秀なミュージシャンを雇えなかったということもあるし、マーヴィンが自分ひとりで好きなように仕上げたということでもあります。

ただそのチープシンセが功を奏しているのが②「Sexual Healing」なのです。シンセとパーカッション、ヴォーカルコーラスが織り成す世界。そしてゴードン・バンクスのカッティングギターの素晴らしさも見逃すことは出来ませんね。この浮遊感が、曲のタイトル通りのSexual Healingを感じさせるのです。素晴らしい曲ですね。

本作の重要なパートナーであるギターのゴードン・バンクスの名演が光る③「Rockin' After Midnight」もいいですね。チープ感は気になりますが、ギターのカッティングが心地よい軽快なR&Bです。

④「'Til Tomorrow」はマーヴィンお得意のバラード。
本作のジャケットとイメージがぴったりです。とてもムーディーであり、真夜中に聴くと堪りませんね~。②にも共通してますが、後のアニタ・ベイカー、シャーディー等に代表されるクワイエット・ストームの奔りともいえるかもしれません。

⑥「Third World Girl」はレゲエのリズムを生かした楽曲で、マーヴィンの曲としてはユニークですね。本作はよく聴くと、結構多様な音楽が詰め込まれており、マーヴィンの決意の程が感じられます。

かなりソウルポップな楽曲の⑧「My Love Is Waiting」がクロージングナンバー。なんかホッとさせられます。

そしてマーヴィンは見事に本作でカンバックを果たしたのです。しかし乍ら、1984年4月1日、マーヴィンは父親に撃たれ、悲劇的な死を迎えてしまいます。
60年代~80年代、ある意味どの時代にも時代の先駆者として駆け抜けたマーヴィンに改めて敬意を表したいと思います・・・。


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