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Nazz「Nazz」(1968)

洋楽を聴き始めたキッカケがモンキーズだったので(あ、もちろん後追いです)、60年代ロックは大好きです。そのモンキーズは大手音楽出版会社のスクリーン・ジェムズ社と契約してましたが、このナッズもモンキーズの後釜バンドとして1968年に同社と契約。但しそのサウンドはかなり本格的で、しかも自作自演。そのサウンドを一手に引き受け、支えていたのが、メンバーのトッド・ラングレンだったわけです。

トッドは17歳の時に地元フィラデルフィアのバンド、ウッディーズ・トラック・ストップに加入。そこで一緒だったベースのカーソン・ヴァン・オステンと1967年にナッズを結成します。他メンバーはロバート・アントニー(Key/Vo)、トム・ムーニー(Ds)。バンド名はヤードバーズの「The Nazz Are Blue」という楽曲から取られたもの。
ナッズデビュー時は、トッド・ラングレンもそれほど知られた存在ではなかったと思われますが、ナッズの実態はトッドのワンマン・バンドであり、その楽曲のクオリティの高さから、自然とトッドが注目を集めるようになります。

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全10曲中、8曲がトッドの作品。他2曲はトッドとメンバーの共作、並びにメンバーの楽曲です。

まずはオープニングナンバーの①「Open My Eyes」からビックリ。
イントロがあまりにもザ・フーの「I Can't Explain」ソックリなんですよね。これはもちろん意図的にやっていたことであって、そこが如何にもトッドらしい。それにしてもこの曲のトッドのギターリフはカッコイイ。アレンジもちょっとサイケな感覚が混じりつつも、手拍子を入れたりコーラスが華やかだったりとポップな部分も感じさせる素晴らしい楽曲。
アップした映像は当時のPVですが、どことなくモンキーズの影響を感じさせる内容。映像の中でトッドが一瞬、ピート・タウンゼントお得意のウィンドミル奏法をやってますね(笑)。

ちなみにこちらは最近のバングルズがカバーしたバージョン。スタジオ音源にライブを繋いだ映像ですが、結構カッコいいです。

こちらはかなりソフトロック風の③「See What You Can Be」。
60年代のソフトロック、アソシエイションなんかを彷彿させるナンバー。こうした一聴すると地味な印象の曲でも、よく聴くとコーラスがかなり凝っているし、間奏のピアノとかドラムにリムショットを入れたりと、バンド・アレンジもなかなか秀逸。

トッドのソロで超有名曲となった④「Hello It's Me」は、実は元々はナッズのデビューアルバムに収録されていたナンバー。
トッドのソロアではミディアム・テンポでメロディをもっと浮かび上がらせるようなポップ・アレンジでしたが、こちらの原曲では相当渋いアレンジ(笑)。もっとスローで、かつ「Open My Eyes」のようなザ・フーを彷彿させる荒々しいバンドのイメージとは真逆の、実に繊細な仕上がりとなってます。トッドはもっとポップにやりたかったのかなあ。

イノセントなトッドらしい楽曲が⑥「If That's the Way You Feel」。
ハードロック好きからは敬遠されてしまうようなメロウな楽曲。個人的にはブライアン・ウィルソンを彷彿させるような凄いメロディを持つ楽曲かと思います。メロディが畳み込まれるように上がっていくところとか、オーケストラも交えたアレンジとか、凄くペット・サウンズ的。
この時代にこういう楽曲を作っていたトッドって、やっぱり天才ですね(確か当時、またトッドは10代だったかと思います)。

かなりR&B色の濃い⑧「Lemming Song」。
ちょっとガレージ・ロック風な、それでいてギターがサイケしている佳作。これも初期モンキーズがやりそうな楽曲。
ギタリストとしてのトッドの力量も相当なものと感じさせます。エンディングにかけてはキース・ムーンっぽくドラムも暴れまくってきます。ドラムのトムはハンサムだった男で女性の人気が高かったようです。以下写真の一番右がトムですが、トッド以外のメンバーはなかなかカッコいい男達ですね(笑)。

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エンディングトラックはナッズ流のハードロックの⑩「She's Goin' Down」。
めっちゃカッコいいハードロック!ただし愛らしいキーボードが入るところはモンキーズの後継を託されたバンドらしい(笑)。
いや~、でもギターがかなりロックしてますよね。そしてこの曲、なんと間奏にツーバスを駆使したドラムソロが入ります。ナッズ自体はハードロックを志向していたのかなと思わせる楽曲。

トッドは同時期に発表されたローラ・ニーロのアルバム「Eli and the Thirteenth Confession」から多大な影響を受けたらしい。ナッズではそういった変わったコードの楽曲はなかなか出来ない…、そういったフラストレーションを募らせていき、結局1969年にナッズを脱退してしまいます。
その後のトッドのご活躍は皆さん、ご存じの通りですね。また久しぶりにトッドのソロも聴きたくなってきました。

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