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Carole King「Welcome to My Living Room」(2005)

4日、唐突にジェームス・テイラーの来年4月の来日の報が届きました。しかも東京で一夜限り。5日から限定でプレセールスが行われていたので、同じ洋楽愛好家のお仲間にお願いし、席は無事に確保出来ました…!!

JTのHP上には「James and his All-Star Band will play 13 shows in Japan, Philippines, Australia, New Zealand and Hawaii in Spring 2024!」とありますね。そう、オール・スター・バンドも従えての来日なんです。スティーヴ・ガッドは叩くのでしょうか…。
このツアー、4月6日の東京がスタートのようなので、反響によってはそれより前に追加公演があるような気もします。

この流れでJTの素晴らしいアルバムをご紹介したいところですが、今回はJTの盟友であり、先輩格のキャロル・キングの素晴らしいアルバムをご紹介致します。

2005年、キャロルは自宅のリビングでホームコンサートを開いているようなライヴを企画します。その時のライヴ音源が同年にライヴアルバムとして発表されてますが、これが凄くいいんですよね。当時62歳のキャロル、決して美しいとは言えない声ですがとても味があり、またそれに応える観客との一体感も素晴らしいのです。

ステージにはキャロルと、1989年発表の「City Streets」からの付き合いのルディ・ゲス、ゲイリー・バーの3人のみ。演奏はシンプルそのもの。そのシンプルさ故に、楽曲の良さが引き立ちます。ステージは以下のような、本当にリビングのような作りです。

アルバム・トップ、オープニングナンバーの①「Welcome To My Living Room」はこのステージのための書下ろしナンバー。
映像の36秒過ぎの歌詞。

 ♪ I’m gonna play some songs for you
  There are so many I’d like to do If I don’t get to them all,
  I hope you’ll forgive me
  'Cause I’m 63 ♪

だって62歳だから…の歌詞に観客は大ウケ(笑)。アルバムでは62歳でしたが、この映像時は63歳だったのでしょう。いやいや、許すどころか、63歳にしては凄いステージですよ。茶目っ気たっぶりなオープニング・ナンバー。キャロル・キングのセンスも感じさせます。

なんとキャロルの一人娘、ルイーズ・ゴフィンとの共演ナンバーが⑤「Where You Lead I Will Follow」。これがいいんですよ~。
もちろん原曲は「Tapestry」収録の「Where You Lead」というナンバーですが、こちらは愛する恋人についていくという内容。それを当時のパートナーであったトニー・スターンに、ルイーズと共演するために母と娘の関係に即した歌詞に修正して貰ったもの。ルイーズも愛らしい。でも実はルイーズも当時で45歳なんですよね。

ジェリー・ゴフィンとの職業作家時代の素晴らしいポップスをメドレーで歌った⑩「Medley」もいいですね。
1961年にボビー・ヴィーに提供した「Take Good Care of My Baby」、キャロル自身のファーストシングルの「It Might As Well Rain Until September」、1962年にスティーヴ・ローレンスに提供した「Go Away Little Girl」、私の大好きなハーマンズ・ハーミッツに提供した「I'm into Something Good」、1963年にフレディ・スコットに提供した「Hey Girl」、1963年にシフォンズに提供した「One Fine Day」、そしてあまりにも有名な「Will You Love Me Tomorrow」、全7曲をキャロルのMCを交えて歌われます。
個人的にはハーマンズ・ハーミッツの「朝からゴキゲン」がキャロルバージョンで聴けるのが嬉しい。

こちらも私の大好きな⑮「Sweet Seasons」。アルバム「Music」に収録されていたナンバーですね。
アップした映像では分からないですが、アルバムのライヴ音源では、歌い出しから少しして、観客が笑う箇所があります。これは歌詞を(恐らく意図的に)以下のように間違えたからですね。
Some times you win
Some times you lose → win
間奏のホーンを3人で口で歌うシーンなんかは茶目っ気たっぷり。それに続くゲイリーのベースもいい味出してます。

そして私が大好きなモンキーズのヒットナンバーを、キャロルがセルフカバーした⑯「Pleasant Valley Sunday」が素晴らしい。
モンキーズの1967年の大ヒット曲ですね。この曲、60年代の屈指の名曲じゃないかなと思ってますので、先にモンキーズのバージョンをご紹介しておきます。この印象深いギターのイントロは、プロデューサーのチップ・ダグラスのアイデアと云われておりますが、メンバーのマイク・ネスミスが実際に弾いております。

実はキャロルとモンキーズは関わりが深く、モンキーズのデビューアルバムには既にキャロルの作品が2曲も収録されてます。その内の1曲はゴフィン=キングにメンバーのマイク・ネスミスが加わったという珍しい作品「Sweet Young Thing」。以降他にも「Star Collector」というサイケの名曲や、後にシティでもカバーしたソフトロックの名曲「A Man Without A Dream」もキャロルの作品でした。
ソロシンガーになり損なったキャロルは、職業作家としてモンキーズに多くの名曲を提供する傍ら、いつかは絶対に自分で歌ってやる!と思っていた筈。この「Pleasant Valley Sunday」には彼女のそんなロック魂を感じさせます。こちらのライヴはモンキーズのバージョンを下敷きに、アコースティックながらも凄い迫力を感じますね。ルディもゲイリーも素晴らしい演奏を披露しております。

キャロルの作品の中では、最もソウルフルな曲のひとつの⑱「I Feel The Earth Move」。
イントロからかなりロックしてますよね。このピアノは名演ですね。特に62歳でも立って力強くピアノを叩くシーンなんかはカッコ良さまで感じさせます。ルディのギターもご機嫌です。

やっぱり職業作家としてのキャロル・キングの代表曲といえば⑳「The Locomotion」でしょうね。1962年にリトル・エヴァに提供したあまりにも有名な1曲。
イントロはキャロル風にアレンジ。Aメロが始まったら、観客も待ちきれずに立ち上がります。
おお~、キャロルもピアノから離れて、かなり大胆なマイクパフォーマンスしますね~。これは観客もノリますね~。めっちゃ観客の声がデカい(笑)。62歳にしては若いなあ…。

このアルバムは全21曲、2枚組でトータル1時間半。かなり楽しめるライヴアルバムです。長年のパートナーであるルディ・ガスの活躍が光るステージでしたが、そのルディも2010年、57歳の若さで亡くなります。

キャロルは2012年5月10日、「これ以上、新たな曲を書いたり、レコーディングすることは、たぶんないと思う」と実質的な引退宣言をしましたが、これはルディの死と関係しているのではと思ってます。それだけキャロルにとっては、ルディは大事な存在だったのでしょう。
実際、キャロルの公式HPの「Friends」には、真っ先にルディを挙げて、多くを綴っております。

でもやっぱりもう一度キャロルの新曲を聴いてみたいものですね…。

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