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The Lovin' Spoonful「Everything Playing」(1967)

私の大好きなラヴィン・スプーンフルですが、リーダーのジョン・セバスチャン在籍時のラストアルバムとなった本作は長らくスルーしておりました。実はここ最近、爽やかな天気も続いていましたし、本作をかなり聴き込んでおりました。
ラヴィン・スプーンフルというと3作目の「Hums of the Lovin' Spoonful」が代表作と目されておりますが、全く目立たない本作も、(駄作も収録されてますが)結構イケているんじゃないかなと思ってます。

1967年5月、メンバーのザル・ヤノフスキーが大麻で逮捕されてしまい脱退。後任には元モダン・フォーク・カルテット(MFQ)のジェリー・イェスターが加入しました。このMFQにはモンキーズのプロデューサーとしても著名なチップ・ダグラスも在籍していました。60年代前半にはこうしたNYグリニッジ・ヴィレッジ界隈のフォーク・グループは皆、交流があったんでしょうね。

本作は全11曲中、ジョン・セバスチャンの単独作が7曲、スティーヴ・ブーン(B)、ジョー・バトラー(Ds)、ジョー&ジェリー、ジョン&ジェリーが各々1曲ずつという構成。引き続きジョン・セバスチャンのラヴィン・スプーンフルであることに変わりはないのですが、ジェリーの加入により、少しだけポップになったような気がします。

本作の先行シングルは、ザル脱退前の1967年4月にリリースされた④「Six O'Clock」かと思いますが、1967年10月にリリースされた①「She Is Still a Mystery」が、ジェリーが加わり制作されたという点で先行シングルと云えます。
相変わらずジョンのポップセンスが十二分に発揮されてますね~。よく聴くといろいろな楽器が使われていることが分かるし、エンディングのコーラスも効果的。アレンジは明らかにビーチボーイズの「ペットサウンズ」からの影響が窺えますね。まだまだジョンの「音楽の魔法」は生きております。
アップしたエド・サリバン・ショーからの演奏シーン、ジョンは変な楽器を使ってます。

②「Priscilla Millionaira」はジョンの作品なんですが、なぜかヴォーカルはスティーヴ。これがまが酷い(苦笑)。かなり下手なヴォーカルなんですよ~。曲はそこそこいいのに凄く残念…。ジョンはもうこの時点でソロとして独立を決意していたのでしょうかね。最後にスティーヴにも歌って貰おうと考えたのかも。あまりに酷いので曲はアップしません。気になった方はYouTube等でチェックしてみて下さい。
ちなみに上の映像でも、スティーヴだけマイクスタンドが立っていないのは、そういう理由だったものと(勝手に)思ってます。

②「Priscilla Millionaira」の後に続く③「Boredom」が凄く癒しの曲に聞こえます(笑)。
タイトル通り退屈な様子が音楽によって奏でられてます。こののどかなスティール・ギターはジェリーのプレイでしょうか。こうした楽曲はジョンの十八番ですね。

こちらもジョンお得意のフォーキーな⑥「Younger Generation」。
ギターがちょっとだけボッサ風な感じも素敵です。こちらのジョンの音楽の魔法を感じさせる名曲ですね。後にウッドストックにジョンがソロで演奏した際にも歌われていた楽曲。ジョン自身のお気に入りの楽曲かもしれません。

如何にもジョンが好みそうなジャグ・バンド風な⑦「Money」。
心地いいバンジョーはジェリーのプレイ。ザルがロック的なギターだったのとは違い、ジェリーはもっとフォーク寄りで、多彩なプレイを聴かせるタイプ。そういった意味ではジョンとはウマが合っていたのかもしれません。実際このアルバム全般的にもそういったジェリーの個性が少し感じられます。

ジョー・バトラー作の⑧「Old Folks」は意外とジョン・セバスチャンの作風に近いかもしれません。
リードヴォーカルはジョー自身。ドラマーなのに結構歌も上手いし、この次のジョン不在のラヴィン・スプーンフル名義の「Revelation: Revolution '69」は、最初はジョーのソロアルバムとして企画されたもの。だからといって「Revelation~」は絶対聴かないだろうなあ。

エンディングはラヴィン・スプーンフルとしてはかなりプログレッシブな曲調の⑪「Close Your Eyes」。
なんだか歌い出しは特に印象にも残らない眠くなりそうなフレーズなんですが、バックのアレンジが徐々に盛り上がってきて、一気にサイケなオーケストラ風アレンジに展開していきます。この曲はジョンとジェリーの共作なんですが、リード・ヴォーカルはジェリーでしょうか(クレジットがないので推測ですが)。そしてエンディングは力強い演奏に展開していきます。ここでそのままフェードアウトしていくのですが、この演奏、結構素晴らしいのでもう少し聴いていたいと感じました。

1968年5月10日のサスケハナ大学でのライブを最後にジョンはラヴィン・スプーンフルを脱退し、ソロ活動を開始。1970年には「John B Sebastian」を発表します。一方のジョーとスティーヴは、驚くべきことに今もラヴィン・スプーンフルとして活動しているようですね。

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