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斉藤由貴「チャイム」(1986)

斉藤由貴って、歌手、ヴォーカリストとしてのパワーは皆無ですが、その独特の柔らかな雰囲気(当時は「癒し」という概念はなかったですね)は抗いがたい魅力を持ってました。その魅力が遺憾なく発揮されたのが本作。間違いなくアレンジャーの武部聡志氏が素晴らしい仕事をしてます
1986年10月発売の彼女自身にとっての3枚目のアルバム。

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①「指輪物語」についてはあまり聴いた記憶がないなあと思ったら、CD化された際に追加された楽曲とのこと。CDでは全12曲ですが、LPでは全10曲。①と⑦がCDでは追加されてます。
シングル「青空のかけら」のB面ソングですが、作詞:松本隆、作曲:崎谷健次郎、アレンジ:崎谷健次郎・武部聡志の強力な布陣の楽曲で、飛び切りのアイドル・ポップ・ソングに仕上がってますね。彼女の持つ柔らかさが引き立つ1曲。

そしてLPトップの②「予感」。これこれ、これが1曲目でした。作詞は本人、作曲は亀井登志夫のじっくり聴かせるミディアムテンポのナンバー。斉藤由貴の楽曲の中でも人気の高いナンバー。
1曲目に落ち着いた雰囲気の楽曲を持ってくることは、こうしたアイドルアルバムには珍しく、じっくりアルバムを作り上げた想いが伝わってきます。
アップしたPVもいいですね。

③「悲しみよこんにちは」・・・、この曲大好きでした。久しぶりに聴き返しましたが今でもイイ曲だと思います。作曲は玉置浩二。ブルージーな安全地帯とは全く違う曲調に驚かされます。斉藤由貴の持つ世界観と一致したアイドルポップスですね。
レコーディングメンバーは全く分かりませんが、イントロのスネアロールがかっこいい。

いきなりシャッフル系のドラムフィルから入る④「ストローハットの夏想い」は完全にAOR系からの影響が窺えます。ホーンはモロにジェリー・ヘイっぽいし。武部氏もその辺は意識してアレンジしたと思われます。
本作中、いちばんのお気に入りです。

⑦「青空のかけら」もヒットしましたね。斉藤由貴は歌が下手なくせに、こうしたシャッフル系のポップスが多く、また妙に魅力的なんですよね。
この曲のクラリネットの使い方なんかは崎谷健次郎っぽい(彼はこの曲とは関係ありませんが)。イントロもいろいろな音が鳴ってますし、これは武部さんのアレンジが素晴らしい。

ファンの間では⑩「アクリル色の微笑」の人気が高いようです。本人作詞、崎谷健次郎作曲の佳曲。味わい深いバラードです。

本当に久しぶりにこのアルバム、聴き返しましたが、なかなか佳曲が詰まってます。私が崎谷健次郎の素晴らしさに気付いたのも、このアルバムでした。
(のちに斉藤由貴は井上陽水のカバー「夢の中へ」をヒットさせますが、そのプロデューサーは崎谷氏です)
武部さんの好サポートも魅力的です。この時代のアイドルポップスの最良の部分がよく現れた名作ですね。


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