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The Young Rascals「Collections」(1967)

蒸し暑いときは、妙に暑苦しいロックが聴きたくなります。
それでチョイスしたのがラスカルズ…。暑苦しいロックだったら初期のヤング・ラスカルズ時代の作品がピッタリ。

日本では、山下達郎さんが敬愛するバンドとして有名で、サンソンのテーマソング「Groovin'」も彼等のカバーソングですね。
ヤング・ラスカルズは、黒人系R&Bやジャズのレーベルとして有名なアトランティック・レコードが、1965年に白人ロックバンドとして初めて契約したバンドとして知られ、ブルー・アイド・ソウル界を代表するバンドなのです。

個人的には彼等のサードアルバム「Groovin'」が大好きなのですが、暑苦しさでいえばやはりこのセカンドじゃないでしょうか。

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プロデュースはメンバー自身。ジャケットの写真、メンバーそれぞれはカッコ良く映ってますが、フェリックス・キャヴァリエだけが正しい位置で、エディ・ブリガティに至っては逆さまに映っちゃってます。でも確かに正しく映っているよりも、注意を惹くし、デザイン的にはカッコイイんでしょうかね。

本作のアルバム・タイトルからすると、ベスト盤かと思ってしまいますが、実際はオリジナル6曲、カバー5曲、全11曲のオリジナル・アルバムです。音楽的にはR&Bを中心に様々な音楽のエッセンスが詰まったアルバムなので、コレクション(収集)というタイトルなのかもしれません。

まずはオープニングナンバーの①「What Is the Reason」はフェリックスとエディの共作。
イントロはザ・フーを思わせるアレンジ。ここではR&Bというよりラスカルズ流のロック。ディノ・ダネッリのドラムはキース・ムーンからの影響が窺えます。エンディングの1分57秒過ぎ辺りからのドラミングなんかは特にそう感じます。ただ、キースだったら、もっと派手に暴れまくると思いますが…。

バディ・ジョンソン作のR&Bバラードの②「Since I Fell For You」はエディの独壇場。
原曲はバディの姉のエラ・ジョンソンが1947年に歌ったものですが、この曲が広く知られることになったのは、1963年にレニー・ウェルチがヒットさせたバージョン。恐らくエディもこちらのバージョンでこの曲を知ったと思われます。レニーのバージョンは、かなりジャージーなアレンジですが、それをラスカルズは完全にR&Bバラードに仕立ててしまってます。そしてエディの熱唱、ソウルフルなヴォーカルがあまりにも素晴らしい。フェリックスのオルガンもいいですね。
せっかくなのでエディの熱唱映像をどうぞ。エディ、意外と背が小さい? ギターのジーン・コーニッシュは容姿がビーチボーイズのカール・ウィルソンに見えてしょうがない(苦笑)。

問題作でもあるメンバーのジーン作の④「No Love to Give」。
この曲、このアルバムではめっちゃ浮いてますよね(笑)。全くR&B色のない、無色透明なポップス(笑)。ビートルズを連想させる、バロック風アレンジ。でも私はこういうの大好きなんですよね。そして本作ではこの曲の位置づけは結構重要なんじゃないかなと思ってます。緊張感のある曲ばかりだったら、疲れちゃいますしね。
想像ですがジーンはこの曲、アコギでフォーキーに作ったけど、美しいメロディからこのバロック風アレンジを連想したんじゃないでしょうか。これはアレンジの勝利ですね。

⑤「Mickey's Monkey / Love Lights」はミラクルズとボビー・ブランドのヒット曲のメドレー。
フェリックスとエディがヴォーカルを分け合ってますが、かなり黒いフェリックスのヴォーカルとオルガンが迫力あります。こういうR&Bはラスカルズの十八番。ちょっと走り気味にリズムをグイグイ引っ張るディノのドラムもグルーヴィーでいいですね。
エド・サリヴァン・ショーに出演した際の「Mickey's Monkey」の演奏シーンもアップしておきます。めっちゃカッコいい!

⑧「More」は1962年公開の映画「世界残酷物語」のテーマ曲。ちょっと異色のカバーソング。
原曲は完全なイージーリスニング。映画音楽ですね。フランク・シナトラも1964年にカバーしてますが、そちらもアレンジはジャズ。こうした音楽の趣味はエディのものなのでしょうか。もちろんこちらのヴォーカルはエディ。ジーンのギターもかなりジャージーなので、ジーンの趣味なのかもしれません。こうした楽曲がさりげなく収録されている点にラスカルズのセンスを感じます。

エンディングは皆大好きな⑪「Land of 1000 Dances」。
邦題「ダンス天国」。1962年に発表したものがオリジナルですが、ウィルソン・ピケットやウォーカー・ブラザーズのバージョンの方が有名ですね。
ラスカルズはコレをメンバー紹介の場に利用しております。それをご丁寧にもそのままレコ―ディング。ブルーアイドソウルの代表格のバンドらしい熱い演奏です。

かなりいろいろな意味で濃いアルバムですよね。
ヤング・ラスカルズとしては、R&Bを自らの音楽に昇華したアルバムの次作「Groovin'」が最終地点となり、バンド名をラスカルズへ変更。4枚目の「Once Upon a Dream」ではビートルズのサージェント.ペパーズの影響からサウンドも、R&Bをベースとしながらも凝った作りへと変貌を遂げていきます。


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