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山下達郎「Big Wave」(1984)

めっきり寒くなってきましたね。こういう時にはあまり聴かれないだろうなあというアルバムが本作(笑)。大好きなんですよね、このアルバム。
学生時代、海に行く際は必ず聴いていたアルバムです。そしてビーチボーイズの素晴らしさに改めて気付かされた1枚でもあります。

このアルバム、同名の映画のサウンドトラックなのですが、映画の内容は全く記憶にありません。むしろ山下達郎の完全なオリジナルアルバムと捉えても全く問題ありません。それくらい完成度は高いですね。
全作品英詞。前半が山下達郎のオリジナル、後半がビーチボーイズ等のカバーといった構成。

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すべてはこの曲から始まります。①「The Theme From Big Wave」。何かが始まるような予感のするイントロ・・・。伊藤広規(B)、青山純(Ds)の山下サウンドを支えた黄金のリズムセクションのタイトな演奏が光ります。

 ♪ We've got summer right here in our hearts 
   And we move with the tide
   We just float in the sun 'til the big wave comes 
   Then we ride ride ride ♪

詞も素晴らしいですね。待ちきれない夏を感じさせます。

②「Jody」は名作「Melodies」に収録されていた「悲しみのジョディ」の英語ヴァージョン。この曲、学生時代バンドでインストとしてトライしましたが、実際に演奏してみると単調な曲で、演奏力で曲をふくよかにする難しさを教えられた1曲です。それにしてもこの曲、サックス以外は全て山下達郎氏が演奏しているのですね。流石です。

③「Only With You」はファンには御馴染みですね。FM「サンデーソングブック」の主題歌ですから。イントロが流れた瞬間に、その時間にスリップしてしまいます。
まさに日曜日の午後にゆったりと聴いていたいナンバー。

⑤「Your Eyes」は「For You」に収録されていた名バラード。個人的にはボズ・スギャックスの「We're All Alone」と並ぶ英詞カラオケの定番です(笑)。山下達郎氏の歌唱力にも注目。エンディングの重曹なコーラスと最後の最後に呟く「I Love You」という台詞が堪りません。

このアルバムの素晴らしさは7曲目以降に続くビーチボーイズカバー3曲で最高潮に達します。
⑦「Girls On The Beach」は初期ビーチボーイズのメロウな名曲。「Sufer Girl」「The Warmth of the Sun」とこの曲は、初期BBの3連ロッカバラードの3部作と勝手に思ってます。微妙に転調していくところとか、絶妙なコーラスワークとか、完全に山下達郎サウンドに同化してますね。

⑧「Please Let Me Wonder」は1965年発表の「The Beach Boys Today!」に収録されていたナンバー。ビーチボーイズがブライアン・ウィルソンの個人的な世界へとなだれ込んでいく、最初の頃の曲で、ビーチボーイズの歴史的名曲といえます。それをチョイスしたことに山下達郎のセンスを思わせます。もちろんスペクターサウンドの再現も完全にコピーしてますね。
私はこの曲はオリジナルより、こちらのカバーがお気に入りです。

オリジナルはカール・ウィルソンの熱唱が光る⑨「Darlin'」。これまた私の大好きなナンバーです。イントロのフィルインがかっこいいドラムは山下達郎本人(というか⑦~⑪はすべて山下達郎ひとりの演奏なんですが)。もともとドラムをやっていただけあって、上手いですね。
原曲はすこしソウルフルな感じなんですが、ここではカラッと仕上げてます。

ひとりカバーもここまで来ると芸術の域ですね。既に1980年にアカペラアルバム「ON THE STREET CORNER」を発表していた山下達郎としては、更に自身大好きなビーチボーイズ等のカバーをサントラ制作の仕事で出来ることに喜びを見出していたことと思われます。
時期外れですが、本作は山下達郎の全てが堪能できる未だに色あせない、素敵なアルバムです。

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