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James Taylor「American Standard」(2020)

JT流、スタンダードナンバーの名演集

JTことジェームス・テイラーは私の大好きなシンガーソングライター(SSW)。70年代に多くのヒット曲を生み出した素晴らしいアーチスト。彼が未だに現役であることはご存じでしょうか。             本作は昨年発売された5年振りのニューアルバム…といっても、40~50年代の、所謂スタンダードナンバーをカバーしたもの。このテのカバーものって、個人的にはあまり好きになれません。ただし本作は別。正直、私が知っているナンバーは「Moon River」くらいなもので、あとはそもそも原曲を知りません。よって、ここで繰り広げられるJTのナンバーは、JTのオリジナル⁇って思ってしまうくらい、彼の癒しのヴォーカルにぴったりな、ハートウォーミングなナンバーばかり。

もちろん原曲を知っている方は、JTの名アレンジを堪能するもよし。私みたいに原曲を知らない方は、JTのオリジナルソングとして聴いてもよし。どっちにしても、非常に心地良いアルバムです。本作を聴きながら、今宵まったりしてみるのもいいかもしれません。

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JT、今年3月で73歳となりました。年季の入った風貌、味わい深いジャケット写真はノーマン・シーフによるもの。1975年の名作「Gorilla」もノーマンの撮影によるものでしたね。
プロデュースはJT本人とデイヴ・オドネル、ジャズ・ギタリストのジョン・ピザレリ。JTとジョンのギターを中心としたシンプルな演奏。ベースはジミー・ジョンソン、ドラムはスティーヴ・ガッド。パーカッションにルイス・コンテ

あまりにも有名な②「Moon River」からご紹介しておきます。巨匠ヘンリー・マンシーニ作曲の、映画「ティファニーで朝食を」の主題歌ですね。数多くのカバーが存在します。
JTはイントロから凝ったコード進行を用いてます。一瞬「Moon River」とは分からないイントロですね。JTの暖かいヴォーカルでようやく分かりました。間奏のスウィートなピアニカのソロはラリー・ゴールディングス。今宵、JTのバージョンを聴きながら、一人お酒を堪能するのも悪くありません。

本作からの先行シングルとなったのが②「Teach Me Tonight」。ハートウォームなメロディはJTのオリジナル作品っぽい。1954年にジョー・スタフォードがヒットさせた楽曲で、こちらも多くの方がカバーしております。JTはダイナ・ワシントンのバージョンを好んで聴いていらしたみたいです。試しにダイナのバージョンもチェックしてみましたが、往年のジャズナンバーっぽい。これがJTのアレンジだと、ああも変わるのかと、ちょっとビックリ。

お次は軽快なシャッフルビートの④「As Easy as Rolling Off a Log」。73歳と思えない軽快なヴォーカル、ちょっと愛らしい楽曲です。それもその筈、この曲、1938年のアニメ映画「キャットニップ・カレッジ」の挿入歌とのこと。これも原曲を聴いてみましたが、やっぱり戦前のジャズっぽいアレンジ。原曲を聴いて、JTバージョンを聴くとよく分かりますが、ギターのアレンジが素晴らしいですね。

ミュージカルナンバーっぽい⑥「Sit Down, You're Rockin' the Boat」はスウィングするJTのヴォーカルが堪能出来ます。ブロードウェイのミュージカル「ガイズ&ドールズ」からのナンバー。
イントロこそ、ちょっとブルージーな雰囲気ですが、一転、軽快なコーラスとJTのヴォーカルの掛け合いが心地いい。

あと2曲だけご紹介させて下さい(笑)。
こちらもシャッフルする2ビートが心地いい⑩「Pennies from Heaven」。こうした楽曲のJTのアコギプレイ、カッコいいですね。印象的な間奏のハモンドオルガンも①と同様にラリー・ゴールディングスのプレイ。ビング・クロスビーが主演した同名映画の主題歌。

イントロからJTのオリジナルソングかと思ってしまった⑬「It's Only a Paper Moon」。Beatlesの「I Will」と一瞬メロディがオーバーダブしてしまいましたが、こちらもコーラスも素敵でハートウォーミングな楽曲です。
1933年にハロルド・アーレンが作曲した名作で、こちらも多くのカバーが存在します。ナット・キング・コール辺りが有名ですが、ポール・マッカートニーもカバーしてます(「I Will」の元ネタかも)。あと桜田淳子さんも…。そしてJTも過去に、1992年の映画「プリティ・リーグ」のサントラでもカバーしてますが、そちらはもっとジャズなカバーですね。

如何でしたでしょうか。この世界的なコロナウィルス感染の中、暗いご時世に「American Standard」…。この時期だからこそ、こうした誰もが落ち着く普遍的なメロディが求められているのかもしれません。そしてその大役は、JTにしか務められない。本作を聴きながら、そんな思いを強くしました。

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