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小坂忠「ほうろう」(1975)

ジャパニーズ・ソウルの古典的名盤

なかなかスゴイアルバムです。こちらもアルファレコード。当時はセールス的には全く会社に貢献出来なかったアルバムですが…。         

70年代、はっぴいえんどが起こしたJ-POPの潮流はユーミンや山下達郎へ引き継がれていきます。そしてバックミュージシャンとして著名なティン・パン・アレー(キャラメル・ママ)はそういった橋渡し的な時代の重要なミュージシャン集団でした。
ティン・パン・アレー、細野晴臣(B)、鈴木茂(G)、松任谷正隆(Key)、林立夫(Ds)の4人をコアメンバーとした集団ですが、彼等が小坂忠をフューチャーした作品が本作です。もちろん本作は小坂忠がティン・パン・アレーを起用した、小坂のアルバムですが、その出来栄えはティン・パン・アレーの作品と言ってもいいかもしれません。ちなみにコーラスは山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子。あまりにも豪華過ぎるメンバーですね。

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従来の小坂氏はフォーキー路線の王道を行っていましたが、突如ソウルフルな路線へと転換した重要なアルバムが本作。とにかく1曲目の①「ほうろう」からファンキーな演奏が炸裂します。細野晴臣が作ったこの作品をティン・パン・アレーがかっこよく演奏します。そこに小坂の淡々としているようで熱いヴォーカルが映えます。
メロディもちょっとひねくれてますね。さすが細野さん!!! ジャパニーズ・ファンクをこんなに格好よく演奏している楽曲があったんですね。

②「機関車」は小坂自身のセルフカバー。もともとはソロデビューアルバム「ありがとう」に収録されていた、のどかなフォーキーソングだったものを、見事にサザンソウル的な郷愁感漂うアレンジに仕立ててます。JT風な原曲も大好きだし、このザ・バンド風なスワンプ・アレンジも大好きです。

最高にかっこいいのが⑤「ゆうがたラブ」。作詞は小坂夫人:作曲は小坂本人。これは強烈なファンキーソング。鈴木茂の随所に切り込んでくるギターが堪りません。もちろん細野&林のリズム隊の熱演も光ります。
この楽曲にはこの当時の最高の演奏が詰め込まれております。当時の日本のミュージシャンも海外に負けておりません。

B面トップが⑥「しらけちまうぜ」。この曲大好きなんですよね。作詞:松本隆、作曲:細野晴臣のゴールデンコンビ。フィリーソウルをここまでうまく仕立て上げてしまうとは・・・。ここでも鈴木茂のギターカッティングが光ります。
後にフィリー好きな小沢健二が東京スカパラオーケストラと共演し、この曲をカバーしてます。
このアルバムのなかでは一番ポップかもしれません。

⑦「流星都市」は、小坂、細野、松本等が在籍していたエイプリル・フールの「タンジール」を改作したものだし、⑨「ふうらい坊」はもちろんはっぴいえんどのカバー。このアルバムにはこうしたカバー的なものが多く収録されているのですが、そのどれもがソウルフレーバーたっぷりの、とても味わい深い仕上がりになってます。

本作はティン・パン一派が全力投球したもので、ものスゴイクオリティです。全員が同じ方向を向いているというか、統一感を感じますね。邦楽なんか聴かないという方も納得の一枚じゃないでしょうかね。        ちなみにこのアルバムは全作品のアレンジに細野晴臣が関わっております。細野さんの底知れぬ音楽的奥行の深さ、彼の類稀な才能に敬服してしまいますね。この70年代の日本のロック史の流れは、細野氏を中心に動いていたような気がします。

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