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松任谷由実「悲しいほどお天気」(1979)

私がリアルタイムで聴いていたユーミンのアルバムは「ダイアモンドダストが消えぬまに」あたりです。(ちなみにシングル「守ってあげたい」の頃は中学生でしたが、そんな私でも印象に残ってます)。
それ以前の作品は全て後追い。ただ大学生の頃、全作品を聴きこみましたね~。そんななかでも「流線形'80」、「SURF&SNOW」、そして本作はよく聴きました。

この時代のニューミュージックの最高峰の音、それが本作だと思ってます。ティン・パン・アレーから流れを汲む豪華なバック・ミュージシャンと松任谷正隆の時の音楽を掴むようなアレンジ。ユーミンの叙情的な詞と素晴らしいポップスメロディ・・・。
決して派手なアルバムではないのですが、音楽とは斯くあるべしといった至福の時間が流れます。

アルバム1曲目の①「ジャコビニ彗星の日」からシブいスタートです。
味わい深いバラードですが、これが1曲目ですかって感じの穏やかな選曲ですね。ジャコビニ彗星群って10月ごろに現れる流星のことらしいのですが、歌詞にも登場する1972年は、たくさん星が流れるということで大きなブームとなったのですが、結局予想が外れたとのことです。それをモチーフに歌詞を書いてしまうとは・・・。

ものすごくアーバンな②「影になって」はユーミンならではのサウンドですね。ユーミンの声には全くR&B色はありませんが、バックの演奏は結構ブラコンしてます。このギャップがいいんですよね。

私の大好きな影の名曲、③「緑の町に舞い降りて」は盛岡を歌った楽曲。スティールギターの音色が、遠い盛岡の街まで旅をする郷愁感をうまく表してますね。歌詞の世界を見事にメロディとアレンジで描ききった名曲だと思います。

世間一般的には④「DESTINY」のような楽曲を名曲と呼ぶのでしょう。
私としては、この曲を聴くと、片岡鶴太郎主演のTVドラマ「季節はずれの海岸物語」を思い出してしまいます。そしてついつい自殺された可愛かずみさんのことも・・・。
何れにしても歌詞・メロディともユーミン・ソングを代表する1曲であることは間違いありません。

本作中、異色の作品が⑨「78」。まるでアース・ウィンド&ファイヤーです(笑)。本作が発表された1979年という時代を考えれば、こうした楽曲が収録されていることも納得です。タイトルは1978年のことかと思ったら、タロットカードの枚数とのこと。
スタジオ録音のエンディングでは野太い男のコーラスが入ります。これがかっこいいんですよね。クレジットを見たら、なんと上田正樹。ユーミンと上田正樹、全く対極に位置するような2人ですね(笑)。

ユーミン8枚目のアルバムはこのように素晴らしい内容となってますが、実はシングルカット曲は1曲もないんですよね。④「DESTINY」でさえ、シングルカットはされていないんですね。
個人的には初期荒井由実の作品と、この頃のユーミンサウンドが大好きです。

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