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Boz Scaggs「Slow Dancer」(1974)

ボズ・スキャッグスというと、一般的に1976年発表の「シルク・ディグリーズ」におけるMr.AOR的なイメージが強いかと思います。その「シルク・ディグリーズ」の前作にあたるのが本作。このアルバムにフォーカスする記事もたまに見受けられますが、やっぱりマイナーな存在でしょうね。

もともとR&Bやサザンソウルといった泥臭い音楽をやっていたボズ。この「スローダンサー」は「シルク・ディグリーズ」へ繋がる重要な試金石的なアルバムで、フィリーソウルをベースにAOR、サザンソウル、ファンク等、洗練された音楽が詰まっております。下の写真は再発時のジャケット。もともとのオリジナルジャケットはボズの水着姿のもので、私が所有しているCDもオリジナルジャケです。

プロデュースはジョ二ー・ブリストル。自身もソロアルバムを発表している方で、この人のアルバムは極上のフィリーソウルで私自身大好きなアーチストなんです。そのジョ二ーがプロデュースしているので、内容については聴く前から想像出来ます。

前述の通り、疲れたとき聴いていたのが⑦「Sail On White Moon」。
このイントロは何かの音楽番組で使われていたような記憶があります。スィートなフィリーソウルであり、何といっても ♪ Sail on white moon ♪という情景が思い浮かぶような歌詞と、それにぴったりのスィートな音楽。疲れた体に染み入ります。「シルク・ディグリーズ」とは一味違うボズが堪能できますね。この曲はジョ二ー・ブリストル作。

よりAORに近いのが1,2曲目。①「You Make It So Hard (To Say No)」なんかはTOTOの連中が演奏し、デヴィッド・ペイチあたりがアレンジしたら、立派なAORになるでしょうね。
ここでのヴァージョンもフィリーアレンジを施しているだけで、女性コーラスは「シルク・ディグリーズ」っぽいです。トップに相応しい軽快なナンバーで、私の大好きな楽曲。

そしてボズ一世一代の名曲、②「Slow Dancer」。実に味わいある楽曲です。
アップした映像は2004年のライヴ映像ですが、年老いたボズとはいえ、楽曲の良さを少しも落とさずにプレイしております。

ボズが敬愛するアラン・トゥーサン。サザンソウルのビッグネームアーチストですが、このアルバムでもしっかりとアランの楽曲をカバーしております。それが⑤「Hercules」。
強烈なファンクチューンで、この当時流行ったブラックファンクの香りを感じさせます。この楽曲はボズのお気に入りらしく、近年でもライブで演奏しているようですね。ちなみに「シルク・ディグリーズ」においてもボズはアランの楽曲「What Do You Want the Girl to Do?」をカバーしてます。

⑧「Let It Happen」、この曲だけはちょっと違う感じです。
もちろんベースはフィリーなのですが、スティール・ギターがフューチャーされているんです。フィリーにスティールギター・・・、これがなかなか合っているんですね。当時、スティール・ギターといえばレッド・ローズ。モンキーズのマイケル・ネスミスとバンドを組んでいたスティール・ギターの名手ですが、彼がここでもプレイしております。
そういえばこのアルバム、ギターはデヴィッド・T・ウォーカーワー・ワー・ワトスンといったツワモノに混じって、ジェイ・グレイドンがクレジットされてます。誰がどの曲で弾いているのか分かりませんが、ジェイがどの曲を弾いているのか、興味は尽きません。

「シルク・ディグリーズ」とは一味違う「スローダンサー」。AOR一辺倒の頃はこうした音楽、「シルク・ディグリーズ」以前のボズの音楽は好きになれなかったのですが、最近はむしろこうした音楽を好んで聴くようになっております。

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