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細野晴臣「泰安洋行」(1976)

香港出張へ行ってきました~。1年3か月前に訪れた際はコロナ明け直後。まだ中国人も殆ど入港していなかったのですが、今回は通常モードの香港。ただ中国の景気が決して良いとは言えず、その影響で香港の消費は落ち込んでいるようです。平日ということもあり、それほど人で溢れていたわけでもなく…。いくつか写真をアップしておきます…観光でいったわけではないですが(苦笑)。

九龍側から香港島を望むお馴染みの場所
ご存じヴィクトリア・ピークから望む豪快な香港のビル群
映画「慕情」の舞台となったRepulse Bay Beach

ということで、ここはやはり細野晴臣のトロピカル三部作の内の一作、香港らしく「泰安洋行」を採り上げます。香港の行きのフライトで聴いてました。
前作「トロピカル・ダンディ」で細野さんは中南米の音楽に焦点を当てていましたが、本作では沖縄とニューオーリンズの音楽が柱となっております。本作でドラムを担当した林立夫は「ずっと底流に流れているのはルンバ」と言い切っております。つまり本作では古き良き音楽のリメイクでありながらも、リズムにルンバが用いられ、そのアレンジがなかなかユニーク。そういった大胆さが、今も聴き継がれていく所以かもしれません。

本作でも引き続きティン・パン・アレーのメンバー、林立夫、鈴木茂が参加。そこに矢野顕子や佐藤博、コーラスに山下達郎、大瀧詠一、小坂忠、大貫妙子等も参加。当時の一流ミュージシャンが、このエキゾチックなサウンドにチャレンジしております。

好むと好まざるとに関わらず、やはり本作のオープニングの①「蝶々-San」には触れずにはおれませんね。
イントロから林立夫のグルーヴィーなドラムが…。沖縄民謡とニューオーリンズの音楽を合体させたような独特なサウンド。コーラスは川田琉球舞踊団。この舞踊団は沖縄舞踊の一派の「冠船流」の歌や踊りを、当時九段下の沖縄宮廷料理の店「みやらび」で定期的に披露していた本物の舞踊団でした。彼女達はこの曲と「Roochuoo Gumbo」に参加しております。そして間奏の ♪ 蝶々さん ♪ が大瀧詠一、続く ♪ ベ~イ ♪ が山下達郎のコーラスです。特に達郎さんは得意のハイトーンコーラスを封印、ここでは低音ヴォイスの細野さんへのリスペクトからか、低音で叫んでますね。

リズムが非常にユニークな④「Roochoo Gumbo」。
細野さんが弾く三線とマリンバが心地いい。途中からイイ感じに入ってくる女性コーラスなんかは完全に沖縄の音楽を連想させます。こちらのコーラスも前述の川田琉球舞踊団です。そしてこのリズム、曲のタイトルからも連想される通り、セカンド・ラインのリズムですね。沖縄音楽なのに、リズムはセカンドラインという絶妙なアイデア。心地よいですね…。

本作にあって、一番異色なサウンドが⑧「Chow Chow Dog」。
イントロだけ聴くとドシッと黒いリズムで、かなりヘビー級な楽曲。R&B的なファンキーな楽曲かと思いきや、よく聴くとスカ的なリズムとなってます。途中から銅鑼が鳴り出し、沖縄音楽風な味付けになっていきますね。

⑨「Pom Pom蒸気」もいいなあ~。
フィフティーズなロックンロール、いやもっと昔のロックンロールですね。ご機嫌なスティール・ギターはオレンジ・カウンティ・ブラザーズの谷口邦夫。
アルバムタイトルの「良い旅を」という意味から、蒸気船が歌われていると思われます。短い曲ですが、こういう楽曲が挟み込まれることで、アルバム全体がより引き立ちますね。

本作では地味な存在かもしれませんが、個人的には⑩「Exotica Lullaby」がお気に入りです。
如何にも細野さんらしい味わい深いメロディ。ここではスカのリズムが用いられてますが、曲自体はフォーキーだった細野さんらしいなあと感じます。細野さん自身が弾いているハモンドオルガンも凄い良い感じ。

 ♪ 夜毎迎えにくる ゴンドラに乗り込もう ♪

今週は香港出張、それから後半は重量級の仕事とバタバタしていた中、夜道でこの曲を聴いて、まったりと癒されてました…。

ちなみに香港からの帰りのフライトは音楽関連、あるアルバムのストーリーとクィーンのライヴを堪能(久しぶりの長旅で腰が痛くなりましたが)。そのアルバムですが、LPは所有していたものの、あまりにもありふれた存在でじっくり聴く機会もなく…。今回改めてそのメイキング・ストーリーを知り、じっくり聴き直したところ、おお~、いいなあと思った次第。気が向いたら記事にアップ致します。

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