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Boz Scaggs「Some Change」(1994)

ロビー・ロバートソンの訃報が届きました。ロビーも80歳だったんですね…。ザ・バンド関連はまだ記事にしていない名盤があるので、またの機会にいろいろ言及したいと思います。

で、今回はボズ・スキャッグスです。来年、来日するんですよね。実はボズはロビーの1つ年下の79歳。声がしっかり出るのか気になりますが、是非とも参戦したいと思ってます。
ボズといえばAORの中心人物と見做されてますが、1980年に「Middle Man」を発表後、時代はAORから産業ロックへシフトしていき、ボズ・スキャッグスはしばらくレコ―ディング活動を休止してしまいます。
そして久々の復帰作が1988年に発表された「Other Roads」。しかしながら、既に時代は大きく変化しており、ボズの音楽はあまり世間に受け入れられなかったと記憶してます。一方、このアルバムに収録されていたボビー・コールドウェル作の「Heart Of Mine」は、オリジナルが日本で大ヒットし、日本ではボビーを中心に再びAORブームが巻き起こります。しかしボズはその波に乗れなかった…。いや乗れなかったというよりも、本来やりたかった音楽を再び追及し出していたんですね。
その動きに呼応したのがリッキー・ファター。おおっ、リッキー、ビーチ・ボーイズのファンにはお馴染みのリッキー。1971年の「カール&パッションズ」からビーチ・ボーイズに加入したあのリッキーです。彼は1979年以降はボニー・レイットとの活動で有名ですが、昨年、グラミー賞を受賞したボニーの「Just Like That...」でもいい仕事をしておりました。
ボニーはブルースをベースとしてますので、リッキーも多分にそういった要素を持っていた人物と思われます。1994年、ボズはそのリッキーと共同プロデュースで「Some Change」を発表するのでした。

洋楽ファンの多くは「Other Roads」でコケてしまったボズの印象が強いため、その次に発表された本作をスルーしてしまっている方が多いのではないでしょうか。私もその一人だったのですが、1曲目、2曲目と聴くに従って、コレはもっと早く気付くべきだった…と考えを改めました。

まずはオープニングの①「You Got My Letter」のシンプルなロックンロールのカッコ良さにビックリ。
AORの欠片も見当たりません。ベタっとしたリッキーのドラムが何ともロックンロールしていて心地いい。ピアノ以外はボズが演奏しております。ギタリストとしてのボズも堪能出来る1曲ですね。

そしてブルージーなタイトル・トラックの②「Some Change」が本作、そしてこの後のボズの音楽的志向を指し示しております。
ボズは根っからブルースがお好きなんですね。ここでのボズのギターソロ、ブルージーです。そして本作のオルガンはブッカー・T・ジョーンズ
ベースはリッキーと共にボニー・レイットを支えているジェイムス“ハッチ”ハッチソン。リズムギターはフレッド・タケット。あ、もちろんドラムはリッキーです。この曲でも明らかなように、本作の肝はブルージーなボズのギターとヘビーなリッキーのドラムですね。この曲だけでも聴く価値あります!

恐らく本作中、一番AORの香りを振りまいている楽曲が③「I'll Be The One」でしょう。
アルバム1,2曲目は往年の(70年代後半のAORという意味)ボズ・サウンドとは明らかに違うナンバーが続きましたが、ここでようやくリラックス出来るナンバーの登場です。かなりアーバン・ソウルな、シングルヒットも狙えそうな楽曲ですね。個人的にはボビー・コールドウェルにも通じるブルー・アイド・ソウル的なナンバーで、かなり好みです。
当時のボズの姿が堪能出来る映像がありましたので、ご紹介しておきます(最初の30秒は飛ばしてください)。テレビ番組でのライブ映像ですが、当時ボズは50歳になる直前。やっぱりカッコいい男です。ドラムは恐らくリッキーですね(違っていたらすみません)。ちょっと他のメンバーは誰か分かりませんが。

③に続いて「Heart Of Mine」風な④「Call Me」。これは①②がお好きな方にとってはスルーしちゃうかもしれませんが、元来AOR好きな私にとっては、こういうのも堪りません。
本作のプロデューサーはボズとリッキーですが、この曲は、あのマッスルショールズのバリー・ベケットが加わってます。また本作の楽曲は殆どがボズの単独作ですが、こちらはマイケル・オマーティアンロベン・フォードとの共作です。バリーやロベンのカラーは全く感じられませんね(苦笑)。でもこういうブルーアイドソウル的なAORはボズの独壇場です。

イントロからマイナー調のバラード風な⑧「Time」は、イントロこそ私の興味はそそられませんが、リズムが激しくなってくる辺りから「おおっ」って感じです。
最大の聴き所は3分20秒過ぎからのボズのブルージーなギターソロでしょう。ギタリスト・ボズが堪能出来ます。あとやっぱりリッキーのドラムってファンキーですね。ジェイムス“ハッチ”ハッチソンのベースもカッコいい。この2人のリズム隊はやっぱりいいですね。

エンディングはかなり渋いナンバーの⑩「Follow That Man」。
かなりブルージーでファンクなナンバー。メロディは単調なんですが、間奏のボズの台詞とギターがあまりにも渋すぎてカッコいい。個人的にはかなり病み付きになるナンバーです。70年代後半に大人の音楽、洒落たAORでブレイクしたボズですが、こうした音楽に行きついたわけですね。

どうでしたでしょうか。なかなかの好盤だと思うのですが…。
この後、ボズはブルース路線に軌道修正していきますし、2013年発表の「Memphis」では原点回帰、メンフィス・ソウルなんかもやってますね。
ボズの年齢も考えると、次回来日公演は行きたいですね~(81歳のポールの来日公演も噂されてますね)。

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