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Carole King「Music」(1971)

先日アップしたB.J.トーマスの記事の中で、キャロル・キングが提供した楽曲「A Fine Way To Go」が随分ソウルフルであると言及しましたが、その当時、実際にキャロルがソロでどういう音楽をやっていたのかちょっと気になり、彼女の作品を紐解いてみると、1971年に発表された本作「Music」がそれに該当します。

本作はあまりにも有名な「Tapestry」の次作ということもあり、その影に隠れて地味な印象がありますが、実はかなりの名作。そして予想通り、オープニングから実にソウルフルなナンバーが飛び出してきます。

プロデュースは前作から引き続きルーアドラー。バック・ミュージシャンも基本的には前作を踏襲しておりますが、一部ジャズ・ミュージシャンが参加している点が大きな違いでしょうか。

まずはイントロからフェンダーローズとコンガの調べ、ギターのカッティングがスリリングな①「Brother,Brother」。
マーヴィン・ゲイの「What’ Going On」にインスパイアされて作ったと云われている名曲ですね。イントロこそスリリングですが、キャロルのヴォーカルが加わってくると絶妙に穏やかな至福な時間、心地よさを感じさせます。間奏のサックスソロはジャズミュージシャンのカーティス・アミー。この1曲を聴いただけで、当時のキャロルがソウルへ傾斜していたことがよく分かります。

カーペンターズのカバーでも有名な②「It’s Going to Take Some Time」。
カーペンターズは翌年、1972年に発表した「A Song For You」でこの曲をカバーしております。この曲は私の中ではカーペンターズが歌うポップスというイメージが強かったのですが、よく考えたら60年代のキャロルはこうしたポップスを作ってきた職業ライターだったわけで、こうした楽曲は彼女の得意とするものだったのかもしれません。
キャロルのピアノをベースに、シンプルなアレンジが曲の良さを引き立たせてますね。エンディングのアレンジはシカゴの「If You Leave Me Now」を連想させます。

シングルカットもされた③「Sweet Season」。
シングルカットされただけあって、ポップなナンバーです。随所にチャールズ・ラーキーのベースが耳に残りますね。ラルフ・シュケットのハモンド・オルガンも隠し味になってます。

当時のキャロルとしては新機軸を打ち出した感のあるジャージーなタイトルトラックの⑦「Music」。
シティ時代の名曲「Snow Queen」を連想させるワルツのナンバー。こちらもカーティス・アミーのアドリブ風なサックスがカッコいい。ジャズのインプロビゼーション風な展開が結構斬新。かなりジャズに接近した作品と言えるかもしれません。

本作中、一番のお気に入りは⑧「Song of Long Ago」、多分これをお気に入りとする方は少ないかもしれませんね。
なぜお気に入りかというともちろんジェームス・テイラーが絶妙なコーラスを付けているからです。アコギもJTですね。そしてこのちょっとほろ苦いようなメロディもメロディメーカーのキャロルらしい。
少し前にJTはキャロルのピアノをバックに「Long Ago and Far Away」という曲を発表しておりますが、ひょっとしたらそのアンサーソングかもしれません。キャロルとJTの関係というのは友人という枠を超えて、盟友という感じなんでしょうね(決して恋人という関係にはならなかったところも盟友・戦友という感じがします)。

イントロから軽快なラス・カンケルのドラミングがカッコいい⑫「Back to California」。この曲、どう聴いてもビートルズの「Get Back」そのもの(笑)。明らかにそれを下敷きにしておりますね。ラルフ・シュケットのエレピがグルーヴィーで心地いいし、演奏しているダニー、チャールズ、ラスのプレイも実に躍動感があり、生き生きしてます。これは演奏していて楽しいだろうなあと。

如何だったでしょうか。この作品も実に味わい深い作品です。当時キャロルは29歳。これから更に素晴らしい楽曲を量産していくのでした。

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