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Van Dyke Parks 「Song Cycle」 (1967)

今回は難解なヴァン・ダイク・パークスです。ビーチボーイズの「Pet Sounds」が歴史的名盤と呼ばれるのに時間がかかったのと同じように、ブライアン・ウィルソンの盟友、ヴァン・ダイク・パークスの「Song Cycle」も名盤と称されるのに相当な時間がかかってます。というか、本作を名盤と呼べるのかどうか、よく分からないという方も多いと思われます。実は私も幾度となく、通して聴くのを断念した経験を持つものです(苦笑)。

そもそもヴァン・ダイク・パークスってご存じない方も多いのではないでしょうか。ブライアン・ウィルソンが奇人であれば、ヴァン・ダイク・パークスは鬼才といったところでしょうか。いや、どっちも才能豊かな変人ですかね。もともと子役俳優だったヴァンですが、カーネギー工科大学ではクラシック・ピアノを専攻。1964年にテリー・メルチャーと知り合い、様々なレコーディングに参加。そんな中でビーチボーイズのブライアン・ウィルソンと出会い、意気投合していきます。
1966年、ヴァンはワーナーのレニー・ワロンカーにソングライターとして雇われ、ハーパース・ビザールを手掛け、所謂バーバンク・サウンドの要として活躍していきます。また同時期にブライアンにアルバム「Smile」を制作するに際しての作詞家として参加要請を受けます(結局、このプロジェクトは頓挫してしますのですが)。

こうした活動の中、ヴァンは自身のソロアルバムを制作します。どれが本作「ソングサイクル」です。

カバーが2曲(ランディ・ニューマンとドノヴァンの作品)収録されてますが、他はすべてオリジナル。かつアレンジも自身で手掛けた、ヴァンの当時のすべてを捧げた作品。青天井で経費も注ぎ込み、全精力を傾けた作品なのですが、全く…、本当に全く売れなかった…。確かに正直、サウンドコラージュのような音楽に戸惑う方が多いのではないでしょうか。ハーパース・ビザールの様々な楽器を用いたドリーミーな音楽を、更に映画音楽風に仕上げたようなサウンドなんですよね。これは確かに商業的には売れなかったというのは理解出来ます(笑)。

アルバムトップはランディ・ニューマン作の①「Vine Street」。
Vine Streetって実際にハリウッドに存在する通りの名前です。2パートに分かれている楽曲で、前半はスティーヴ・ヤングの華麗なギターを中心とした軽快なサウンド(ヴァンはバンジョーを用いて軽やかに仕上げてます)、後半はノスタルジックにスローに展開されます。全く違う楽曲を組み合わせたような形です。オリジナルのランディのデモバージョンは、後半のものしか聞けませんでしたが。一方二ルソンも1970年にカバーしてますが、そちらのバージョンも前半はロック調、後半がピアノをバックにスローに…と同じように仕上げてます。

万華鏡のようなサウンドの②「Palm Desert」。
基本はオーケストラをバックにヴァンが歌ってますが、よく聞くといろいろな音が聞こえてきます。どれだけの楽器が使われているんでしょうね。鳥のさえずりすら聞こえてきます。古き良きアメリカのサウンド…ですね。

⑤「All Golden」の原型のような映像がありました。
ヴァンがピアノの弾き語りで、この曲を演奏しているものです。これを見ると、ヴァンが素晴らしいピアニストであること、この曲が複雑なメロディを持つことがよくわかります。このメロディを、いろいろな楽器で表現しているんですね。原型を聞くと、このアルバムの素晴らしさ、つまり圧倒的な表現力の豊かさに驚かされます。後にその弾き語りもアップしておきます。

⑧「Donovan's Colours」はタイトル通り、ドノバンの作品。
原曲ではフォーキーなディランタッチな楽曲なんですが、そのイントロのスリーフィンガーは、ここではハープが奏でてます。ほかのサウンド、表現方法はホント、ビーチボーイズのペットサウンズ風。ブライアン・ウィルソンがヴァンから如何に影響を受けていたのか、よくわかります。

ある意味本作の集大成的な作品の⑪「By The People」。
女性コーラスで始まり、わかりやすい曲かと思ったら、相変わらず先のメロディが読みづらく、どんな楽器が飛び出してくるのかも分からない不思議な楽曲。ヴァンならではの表現方法であらわした1曲。

確かに本作って、ペットサウンズが評価された現在でも、なかなか分かりづらい作品だと思います。ヴァンは本作の商業的な大失敗で懲りたのか、自身の次作ソロ発表は5年後となります。

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