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「けじめ」とか「筋」にうるさい夫婦

こんにちは、ゆのまると申します。

昨日のパート中のこと。先輩と並んで作業していると、私の左手の結婚指輪に気付いて「きれいな指輪ですね」と話を振ってくれました。

手先を使う作業ですが、作業中は手袋をしていることと、外出時に指輪がないと無くしたと思って焦るため、基本的にパート先にもつけていくようにしています。

結婚指輪といえば、一般的に女性の方が憧れが強いイメージがありますが、我が家では夫の方がせっせとつけています。私の方がひきこもっている時間が長いからというのもありますが(お互い家にいる時は指輪をしません)、夫には「結婚指輪はけじめだから」という美学があるようす。それまでアクセサリーの類はまったくつけなかったのに、挙式後からは毎日指輪をして出社しています。


そんな指輪のアレコレを先輩に話していると、それまでにこやかに聞いてくれていたのになんだか表情が曇ってきました。

「……けじめ?」

「(ん?)そうなんです。夫、九州の出身なんですけどそういう筋を通すとか仁義を切るとかに細かくて」

今時真面目ですよねぇと笑っていると、おそるおそる、といったふうに先輩が聞いてきました。

「……箱崎さんの旦那さんって、そういう組の方なの……?」

た、ただのサラリーマンです!


すじ【筋】を通(とお)す
ことの首尾を一貫させる。道理にかなうようにする。また、しかるべき手続きをふむ。すじを立てる。

コトバンクより

幸いその場は和やかに解散したものの、我々は令和の時代に入籍したわりには考え方に古風なところがあるようです。

けじめ、筋を通す、仁義を切る。ひょっとすると任侠映画でしか聞かないような台詞ですが、これは特に仕事の上で重要な考え方だと、私も夫も考えています。というか、そういうふうに習ったんですよね。

新卒で入った会社で最初についた上司は40代前半で3児のパパでしたが、これから長い社会人生活を送るうえで最も重要だと教えてくれたのが、「筋を通す」ということでした。

私の仕事は、主に同じ班内で完結するものでしたが、時には他部署の協力が必要なこともありました。

そんな時、上司は決して「担当者同士で話をつけておいて」なんてことは言わず、必ず私を連れて該当の部署に赴き、係長や時には課長相手に「こういう事情でおたくの協力が必要で、こいつに担当させるので何卒よろしくお願いします」と頭を下げるのです。そうして上と上との話がつけば、後は担当者に任せる。もちろん事が無事に済んだ後も、再び感謝を伝えに行きます。

上司は長年そのやり方をしてきたようで社内に知り合いも多く、「(上司)くんの口添えがあるなら」と事態がスムーズに運んだことは一度や二度ではありませんでした。そのおかげで、右も左もわからない新人にも、徐々に顔見知りができていったのです。

「遠回りに見えるかもしれないが、結局これが一番確実で早いんだ。面倒だろうけど、こうしていちいちお願いしたりお礼を言うことで、おまえも愛される人間になっていけるはずだ」

他部署から戻る道すがら、上司はいつもそんなことを言っていました。初めて「けじめ」なんて耳にした時は、これから指でも詰められるのかと震えましたし、たくさん叱られてたくさん泣きましたが、それでも厳しく、たくましく鍛えてくれたいい上司でした。


「筋を通す」エピソードをもう一つ。

私と夫は入籍の半年ほど前から同棲を始めたのですが、引っ越し先がすんなり決まった関係で、本来先にするはずだった私実家への挨拶が後回しになってしまいました。

といっても、お付き合いしている人がいるというのは前々から話してありましたし、引っ越し日まで余裕がなく、ちょうどお盆の時期だったのもあって、実家の母も「落ち着いたら遊びに行くよー」とのほほんとしていました。

ところが、ひょんなことからそれが夫のお母さんの耳に入ってしまったからさあ大変。「女の子のご両親に挨拶もせず同棲だなんて!」とお叱りの電話がかかってきてしまいました(夫に)。

間の悪いことに、珍しく風邪を引いて病み上がりだったにも関わらず、一時間近くお説教される夫を見ながら、びびりながらも(なんてしっかりしたご家庭なんだろう……)とかえって信頼度が増す一方。生活水準はもとより、挨拶や態度といった、人それぞれの基準があるものが似通っているというのは、幸運なことだと思うのです。

結局なんとかお母さんには納得してもらい、「やっぱり筋を通すって大事なんだ」と二人で改めて心に刻んだのでした。


私が以前いた会社も夫の勤務先も、どちらかといえば古い日本の企業です。だからこそ成果を急ぐより、「相手の顔を立てる」という古式ゆかしいやり方が美徳とされるのだと思いますし、多くの若い方にとっては面倒だと感じてしまうかもしれません。

それでも、時代や会社が変わっても、人間同士のやりとりであることには変わりなく、そこには一定の「けじめ」が必要だと考えます。もちろん、中にはこうした考えを嫌悪する人がいることもわかっているから、私も夫も他人に強要することはなく、ただ自分の流儀として譲れない、というだけですけどね。

中身のないしきたりは変えていきつつも、人として大切なことは変えたくない。令和を生きる、「筋」にうるさい夫婦のお話でした。

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