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「焼肉メイト」の条件

こんにちは、ゆのまると申します。

一昨日つぶやいたとおり、夫と焼肉に行ってきたんです。

席に案内され、何から頼もうかとメニューを眺めていると、隣の席から若い女の子の切羽詰まったような声が聞こえてきました。

「私、今月で5kg痩せたいの」

繰り返しますが、ここは焼肉店。日常の些細なことを忘れ、ただ一心不乱にお肉をいただくための戦場です。場にそぐわない発言に、思わず夫と顔を見合わせてしまいました。

「だから、帰ったらスクワットのやり方とか調べて、明日から本気出すの」

明日からダイエットする。

本当にこんなこと言う人っているんだ……と、まるでツチノコを見たような気分になってしまった私でした。マナミ嬢(仮名)がダイエットに成功する日は来るのか。それは彼女のみぞ知る……。


さて。

「今夜は焼肉」という楽しみな予定があったおかげで、月曜日は週初めからハードな業務内容であったにも関わらず、高いモチベーションを持って仕事を終えることができました。さながら目の前にニンジンをぶら下げられたウマのよう。それだけ、「焼肉」のもたらす効果は偉大なのです。

我々夫婦が焼肉に行く頻度は、大体2,3か月に一度程度。牛角以上トラジ未満のお値段の、いわゆる街の焼肉屋さんです。

私にとって焼肉は、ただの食事では収まりません。ライブに行く、遊園地で遊ぶ、お寿司を食べに行く(回るのも、回らないのも)。これらと同様の、「楽しみ曲線」を描くものです。

すなわち、眠れないほどではないものの前日からワクワクし、最初は小さな火種から始まってだんだん大きくなり、やがて盛り上がりは最高潮に達して帰り際はいつもほんのり切なくなる。興奮ゲージを表すとすると、そんな綺麗な放物線になります。

「焼肉はライブだ」と、どこかの焼肉屋さんのトイレに張り紙がしてありましたが、まさにそのとおり。我々はその一瞬しかないお肉の輝きから、決して目を離してはいけないのです。


そんな「生モノ」である焼肉、一緒に行く相手も慎重に選ばなければなりません。ソウルメイトならぬ焼肉メイト。美味しいお肉は誰と食べたって美味しいけれど、それが最高のメンバーであればあるほど、より美味しいものになるのです。

たとえ普段どんなに仲が良かろうと、「全員ホルモン好き」などの共通点がある場合を除いて、焼肉に行くのに4人は多すぎると思います。やはりここは、サシ。お互いの好みを知り尽くした相手と一対一で網を囲むからこそ、余計な気遣いを捨ててお肉と向き合うことができるのです。


焼肉というのは、開幕からフィナーレまで、数多の選択肢が訪れます。

最初にナムルやキムチは頼む?初手はタン塩とカルビでいいかしら。野菜は頼む?ガッツリ白米、それともサンチュであっさり?シメはどうする?デザートは?

一例を挙げましたが、焼肉はこうした「次はどうする?」の連続です。この記事を読んでくださっている皆さまは大人なので、「なんでもいいよ、美味しく食べるよ」といった方がほとんどかと思いますが、私はまだまだ己の欲望に忠実でいたいお子様。めったにない焼肉というショーを、全力でわがままに楽しみたいのです。なるべくなら妥協はしたくありません。

こうした腹の探り合いを、網の上のお肉から注意を逸らさないまま行う……。なんて高度なコミュニケーションが必要なんでしょう!昼下がりにパスタをつつきながら、女友達の彼氏の愚痴を聞くのとはワケが違います。

その点でいうと一緒に焼肉に行くのに向いていないのは、付き合う前の微妙な関係性の人。好みが合うかの試金石にはなるかもしれませんが、貴重な焼肉チャンスを、お互いに気遣いに疲れて無駄にはしたくありません。

また、相手がたとえ奢ってくれるような相手だとしても、「美味しい」お肉は食べられても「美味しく、楽しく」いただくのは難しいかと思います。そこでは「奢り奢られ」という上下関係ができてしまい、網の上でお肉が焦げていくのを見ながら、相手のどうでもいい話に相槌を打たねばならない場面もあるでしょうから。

私が社会人になりたての頃、大きなプロジェクトがひと段落して上司が叙々苑に連れて行ってくれたことがありました。

叙々苑。私がこれまでに食べた焼肉の中でも、最高ランクのお店です。

しかし、慣れない高級店と上司への対応で私のキャパシティはいっぱいになってしまい、肝心の味の方はほとんど覚えていません。唯一記憶に残っているのは、すべてのお皿に紫色のお花が添えられていたことくらい。焼肉は「誰と」行くかも大事。そう感じた出来事の一つです。

そう、美味しいお肉を食べている時に、会話なんていらないのです。

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向き合うべきは目の前のお肉であって、相手との会話は二の次。しばしば訪れる沈黙にも耐えられる相手か。焼肉メイトの条件には、そんなことも含まれます。


こうして書いてみると、某井之頭さんよろしく、孤独に焼肉店に赴くのが一番のような気もしてきます。

その点につきましては恥ずかしながらわたくし、一人焼肉はまだ実績解除しておらず、なんとも申し上げることができません。しかし、どうしても肉が焼きたくなって在宅勤務日に焼肉ランチをしてきた夫いわく、「誰かと食べる方が美味しい」とのことでした。

勇気を出して一人でロースターを前にすることができましたら、また感想を述べさせていただこうと思います。


我が家では、大きな仕事をこなす、家事をがんばるなどして「徳」を積むことで、焼肉屋さんに行けるルールとなっています。

いずれ来るその日まで、真面目に生きていかねば。そして次こそは、腹八分目のオーダーをキメて優雅に帰路に就きたい……そう決意を固める私なのでした。おしまい。


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