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「こぢんまり」が好きな私

こんにちは、ゆのまると申します。

今日も朝から暑いですね。まだ6月なのにタオルケットを出してしまいました。今年の夏、大丈夫か……?


働いていた頃、仲のいい同僚さんに教えてもらった、小さな喫茶店がありました。

神保町のビルの間にひっそり居を構え、知らないと通り過ぎてしまうようなお店。店内は二人掛けのテーブルが3つとカウンター2席だけ。マダムが一人で切り盛りされていて、ランチ時のメニューはカレーとハヤシライス、それからコーヒー。夜になると、少しお酒も出しているようです。会社からは15分ほどと決して近くはなかったのですが、何度か利用しました。

行くのは決まって、雨の日。予約ができないお店だったので、人の少なそうな雨の日を狙っていたのです。

会社からえっちらおっちら歩いてきて、額の汗を拭き、壁に備え付けられた小さな本棚を眺めて過ごします。絵本や、カフェ作りの本が多く並んでいました。一度、神妙な顔でひそひそ話し合うおじさま方と居合わせたことはありますが、それ以外はほとんど私だけという、経営が少し心配になってしまうようなお店でした。

しかし、出てくるカレーはしっかりスパイスが効いていて美味。辛いのが得意でない私はお水をお替わりしながら、ぺろりと完食。なくなっちゃった、としょんぼりしていると、マダムが頃合いを見計らってコーヒーを出してくれます。ソーサーには小さなクッキーが乗っていて、ちまちま食べながらほうっと一息。

お昼休みの残り時間は、あと20分。あと10分もしたら、お店を出てまた坂を上り、会社に戻らなくてはなりません。それでもこの10分間は、会社員という立場を忘れてじっくりコーヒーを飲める、貴重な休憩時間でした。

開放的なテラスや明るい店内も好きですが、人が少ないこぢんまりとした空間の方が、私は落ち着きます。ぼんやりカップのふちを指でなぞったり、かすかに流れる音楽に耳を澄ましながら過ごす時間。お店の人からすると、たくさんお客さんが来るに越したことはないと思うのですが、客の一人からすると、あんまり見つからないでほしいなぁ、と密かに願ったりもします。


どうして今回この話をしたかというと、とある方の文章に出会ったのがきっかけでした。たまたま見つけたそれが、この「こぢんまりとした喫茶店」そのものの雰囲気だったのです。

勇気を出してお花を買ったこと、店員さんの心遣いに嬉しくなったこと。書かれている出来事は目新しいものではないけれど、それを綴るために選ばれた言葉や添えられた写真が、とても私好みでした。

何を隠そう、「丁寧な暮らし」がちょっと苦手な私。右を見ても左を見ても「丁寧な暮らし」が溢れている今日この頃ですが、そんな生活が眩しく、また、稀に「丁寧な暮らしをしているワタシ」が透けて見える人もいたりしてちょっともやもやすることも。当方、白湯も飲んでいないしコーヒーはブレンデイだし好きなお菓子はコンソメポテチですからね。

でも、その文章から見えてくる世界は、そんな私でも「あ、いいな」と思えるような描き方だったのです。主観的な話ばかりで申し訳ないですが……今まで少し抵抗があった「丁寧な暮らし」への見方も、もしかしたら少し変わるかも、と感じています。

もちろん作者の方からしたら、できるだけたくさんの人に読まれるのを希望しているとは思うのですが、どうかこの素敵な空間を守ってほしいなぁ、なんてまた勝手に思ったりしたのでした。おわり。


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