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好きな天気のお話

「好きな天気はなんですか?」と聞かれたら何て答えますか?

多くの人は「晴れ」と答えるだろうか。この季節になると外で過ごしやすいのは「曇り」かな。もちろん、「雨」が好きな人だっているだろう。

もう少し細かく絞ることもできる。

快晴、薄曇り、雪、あられ、雷、などなど。

例えば季節と絡めて、夏の夕暮れに雨が降って虹が見えるのが好きとか、秋の夜にすすきが少しなびくくらいの風がある晴れが好きとか、冬の雪が積もった後の雲も風もない快晴が好きとか、春の桜の散り際にその花びらを流してしまう雨が好きとか。

季節に絡めるまでもなく、雪は季節と強く結びついている。降る場所と降らない場所だってあるから場所にも寄ってくる。そうなると天気と場所を結びつけたって良さそうだ。

近くの川の水面が綺麗に色づく冬場の晴れた朝方が好きとか、湖の辺りのカフェでコーヒーを飲みながら眺める梅雨ごろのしっとりとした雨が好きとか、あるいはより個人的な体験として、初恋の人とデートした4月の夕方のあの天気が好きとか、思いを巡らせばいろいろある。

私はというと、梅雨の時期のしとしとと降る雨が好きで、真夏の入道雲とそれが似合う暑さが好きで、冬の初めのしんしんと降る雪が好きだ。それから星を見るのに最適な新月のカラッと晴れた夜が大好きだ。皆さんはどうだろうか。


天気の話なんて一番面白くないのにこれを書いているのは、今日は天気に関するちょっとした発見があったからだ。それは「霧雨は文学的だ」ということである。

今日の天気は霧雨だった。霧雨と言っても色々あると思うが、視界は良好で雨が降っている様子は見えないけれど、歩いているとちょっと濡れたことには気づける。車を運転していると細かな水滴がほぼ点のようにフロントガラスにつくけれどワイパーをかけると水分が足りなくて軋んでしまう。そんな感じの天気だ。

これってとても文学的だなと思った、というのが今日の出来事だった。

私は大学院生で今日も研究室に行っていたのだが、今はフランスからの留学生がおり彼と話していた。その中で「外は雨が降っていましたか?」と聞かれ(日本語がとてもうまい)、霧雨が降っていたよと答えようとしてとても困ってしまった。実際、霧雨という日本語は通じなかったし、それに対応する英語もわからなかった。何か写真で説明しようとしたが、そういえば今日くらいのうっすらと降っている霧雨は視界にそれほど影響を与えないので、これをうまく写している写真は探しても無いということに気づいた。

霧雨という天気の中でもその雨の具合がうっすらしているような天気は、写真や映像という視覚情報で伝えるのは難しいし、音も立てないので聴覚情報で伝えるのも難しいし、ちょっと濡れるなというような触覚の情報はそれそのものを共有できないので、これは体験するかあるいは言葉によって伝えるしかない、とても文学的な天気だ、と思い至ったのだった。


文学的な天気、他にも色々ありそうだ。それこそエピソードと結びついた天気は文学的な天気なのだろう、きっと。

天気の話題は面白くないかもしれないが、でも天気は日によっても場所によってもそのときの気分や一緒にいる人によっても全然違ったものになりうる。そんなことに気付かせてくれた今日の霧雨は、私は好きである。

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