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知り合いがアイドルや役者になるということ

 フィクションの世界では親友や幼馴染が芸能界へ入る話がよくあるが、現実にはそうはない。ただ、よく周りを見渡してみると、芸能に携わっている知人や友人は案外その辺りに居たりする。高校生の頃にはインフルエンサーと呼ばれるような存在がいたし、大学生になると音大ということもあって、世界的なフェスやメジャーレーベルと契約する人も何人かいた。中学の同級生の中にも役者になった人がいる。

 特にアイドルは勘違いされやすいが、よほどの奇才でない限り、芸能人と呼ばれる人たちはあなたの周りによくいる人たちとそう変わらない。ひょっとしたらあなたの方がその分野に対しての才能があるかもしれないし、時には寝坊や単位を落としたり、普通にご飯を食べに行ったりする。別にアイドルだからといって排泄物が身体の中に溜まっていくわけでも、すべての芸術家がスティーブ・ジョブズやサルバドール・ダリのような変人でもない。

 それでも、ひとつだけ違うのは、芸能人と呼ばれる人の多くが「他者を惹きつける才能」を持っていることだ。これはクラスの中心にいるような人ばかりがそうなのではなく、周囲の人たちが気付けないことも多いのだが、やっぱり「この人をなんとか良い形に持っていってあげたいな」とか、「あいつをスターにしなきゃいけない」とか、応援したくなるような雰囲気を醸し出している。普段から話していても、何か気になるもんね。

 売れる、売れないという定義自体が正しいかどうがはわからないが、最初はよく弱音を吐いているような人すらも、ファンがついてくるといつの間にか逞しくなっていくんだ。坂道やハロプロ、スターダストといったアイドルが好きな人にはわかってもらえると思うが……

 とはいえ、遅咲きの人もいるけれども、基本的には年齢が低い方がチャンスは広がっているので、天性の才能や原石を素早く削り出していかないと、そういった時期をすぐに過ぎてしまうのも確かな話。スポーツの世界でもそうで、どんどん低年齢化している。芸能の世界では「消費」というワードが付き纏っているが、彼らや彼女たちを守るという意味合いでもあまり子ども扱いするのもどうかとは感じなくもないが、半分以上の芸能人が大手事務所には入れないので、業界全体のガイドラインを作っていくのも大事。もっと踏み込むと、マスメディアや各個人にもプライバシーや消費に対しての意識づけを行なっていかなければいけない。

 現場へ行くたびに思う。「芸能人って、ほんとうに大変な職業だなあ」って。ファンタジーの世界になりきるのも、アイドルの衣装で露出が増えていく様も、よくわからないインタビューに答えている姿も、非日常の世界で生きている人たちの日常に過ぎないけれども、時々我に帰って、「この人たちはどのような気持ちでここにいるんだろうか?」と考え込んでしまう時がある。特に、名前や存在を噂程度でも知っている人だと尚更で、芸能人にならなかった人生を想像することも稀にある。

 それでも、芸能界を選んだ勇気は素晴らしいと思うし、知り合いならより、その人がスターになれるように支えてあげたい。同郷の人でもそうなのだから、知っている人は特別だ。親しい友達でなくても、一番になってほしい。トム・ウォーキンショーがヤマハエンジンのスタッフに言っていたが、二位でも、三位でも、特別賞でもだめだ。やるからには、全力で頑張っている限り、友達の勇気を讃えるために心の底から応援したい。

 絶対に夢を叶えてほしいんだ。あなたなら、大丈夫。わたしが保証する。

 2024.5.19
 坂岡 優

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