「サインがバチッ」

どうやら女の子からもサインを出しているらしい。
それも送りバントやヒットエンドランみたいな類のサインを。

つまり試合を有利に進めるための、かなり堅実な合図だと言いたい。
しかもそれは女の子同士ならば、見ればすぐにその行動の意味が分かるらしい。
このサインを見落とした男には“もう鈍感なんだから～”の烙印が押される。
実際に女友達から聞いたから間違いない。

例えば、じっと顔を見る。
「え、何？どうしたの？何か付いてる？」
などと男が言うまで見る。
言葉の代わりに、うふふっ、みたいな笑みで返事する。
この“含みのある笑み”がサインらしい。
電車の前の席に座って、わざと足を組み替えたりする。
それもゆっくり目で、何回か組み替える。
この“ヨガを取り入れた筋トレみたいな動き”がサインらしい。
モーションを盗んでね、ということだろう。
あとは、二人きりになると涙をみせる、とか。
お弁当の時に味噌汁の袋を開けて作ってあげる、とか。
ホント？と耳を疑いたくなるようなサインだらけらしい。

これでは男にとっては、イルカ同士の会話を傍聴するのと同じように難解だ。
個人的には、何度となくサインを見落としていたであろう事が悔やまれる。
もてる男というのは、こんなサインに出会うことが日常茶飯事なのだろうか、むむむ。
逆に、男からのサインの場合は“ホームラン打て”みたいな無謀なサインを出している気がする。

僕ならもっと分かり易く偶発的な方がぐっと来る。
運命を感じさせるような。
少し前、お店で女店員さんからお釣りを受け取る時に、バチッ、ときた。
僕が帯電していたのか、彼女が放電していたのかは知らないが、
とにかく、バチッ、ときたのだ。
静電気だから、どちらのせいとかではないんだけれども。
「スミマセン…。」
と女店員さんが謝った。
その“スミマセン”が同時だった時に、僕の心はバチッと感電してしまった。
ここで（おいおい頭ん中、漏電しとるがな。）と思われた方はお引取り願いたい。

そういえば以前、乗っていた飛行機に落雷したことがあった。
隣の席にいた会社員の男が、すかさずスチュワーデスさんを口説き始めた。
男がバチッときたのか、スッチーがサインを出していたのかは定かではない

#なごみの手帖 　[ 2006年2月11日（土）更新 ]