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バスに乗ると、なんかウケる

大学入学を機に引っ越してきてから、よくバスに乗るようになった。
一週間分の食料を調達するために、週末にバスに乗って買い物へ行く。
地元でいた頃の移動時手段は、もっぱら自転車か車の助手席だったため、バスに乗る機会がほとんどなかった。高校からの帰り道、7、8年ぶりくらいにバスに乗った時には、降車時に両替をして待たせてしまうのが申し訳なさ過ぎて、財布を小銭でパンパンに膨らませて乗った。しかし料金表の見方が分からず、乗車中ひたすらGoogleに助けを求め続けていた。

今は、すっかりバスにも慣れて音楽も聴いちゃったりしている。
高校生の頃は、無事に乗って降りてすることに必死だったため考えていなかったのだが、余裕ができてくるとバスの開閉音が気になって仕方がなくなってきた。
ブーという少し高めのブザー音が鳴り、ガーとドアが開く。
どこかで聞いたことのある音だった。もちろんバスの開閉音としてはよく聞くが、バス以外で聞いたことのある音だったのだ。
バス停に停まるたび、その開閉音を聞いていると、なぜだか笑えてきた。
この面白さは、なに由来のものなのかと記憶をたどってみる。
頭に浮かんできたのは、ガキ使の『笑ってはいけない』に登場するバスの音だった。
そりゃ面白いはずだ。
毎年、大晦日はガキ使のCM中に紅白を見て、紅白に飽きてくるとガキ使を見て、という二刀流で過ごしていた。そして、紅白よりもガキ使は早い時間から始まるため、番組の序盤にあるバスのコーナーはしっかりと見ていた。
バス停に停まるたび、笑わせるための刺客が乗車してくる、あれだ。
一度気になり始めると、バス停に停まるごとに「待ってました!」と開閉音に耳を傾けてしまう。乗ってくるおばちゃん、おじちゃんが寸劇を始めることを期待してしまっている自分もいる。
そんな寸劇など始まるわけもないけれど、バス停が近づいてくるとドキドキしてしまう。
笑ったとしても「アウトー」と叫ばれることもないし(まぁ多少、奇異の目を向けられるかもしれないけれど)、そもそも笑うような出来事も起きない。でもやっぱり姿勢を正してバス停に停まるのを待ってしまう。

バスに乗る頻度が高い人にとってバスの開閉音は、日常にある音の一つかもしれないが、バスに乗ることがなかった私にとっては大晦日の『笑ってはいけない』で聞く音だった。
それに、この音と笑い声はいつもセットになって聞こえてくる。
バスの乗り方には慣れても、いまだにバスの開閉音は、なんだかウケる。
いつかブーっと停まって、私を笑わせる刺客たちが乗車してきたらいいのに。

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