「君なら大丈夫」
ある病院の先生は私にこう言った。
一生治らない病気と向き合い続けなければならないのだと、世間一般の人が当然のように持っている選択肢が全く無いのだと告げられて私が幼いなりに絶望した日のこと。
「賢い君なら、これから自分の病気について沢山考えて自分の答えを出せる。君なら大丈夫」
「あんたは賢くないんだから人並み以上に努力しないといけない」と言われた幼少期。大切なところで選択を間違えることも日常茶飯事だった私は、自分はバカでどうしようもない人間だと思っていた。別の誰かに言われていたら『嘘だあ』と思っていたかもしれない。
でも先生は違った。宥めるようなその場限りの言葉ではなく、私に正面から向き合って話してくれた。それまで会ったことのない人だった。
先生は「君の病気をもっと詳しく研究している先生がいる。話を聞いてみたいなら紹介状を書くよ」と言って、東京にいる先生(今の主治医だ)との橋渡しをしてくれた。
それから何年も後に、私はこの主治医の先生が勤める病院に通うようになる。何があるか分からないものだ。
これから先も忘れられない、ある先生の話。
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