Yuta Akiyama

美術家・建築家。主に建物や建材を扱い「移動/集積」といった手法で「地霊」を呼び起こす作…

Yuta Akiyama

美術家・建築家。主に建物や建材を扱い「移動/集積」といった手法で「地霊」を呼び起こす作品を制作。『BARRACKOUT』展 (2016)『ground under』展 (2017) 『Super Circulation / 超循環』展(2018)

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「第四の部屋へ招待すべき日まで」

2020年3月11日、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長はCOVID-19(新型コロナウイルス感染)の流行をパンデミックだと発表した。感染予防の為に人との直接接触を避けなくてはならない日々がはじまった。他人との接触を避けるために、自宅に閉じこもり生活をする人が増えた。こうした事から、これから先の「生活スタイル」と「住宅のかたち」に関心を持つ人も増えた。そして、オンラインでの体験が豊かになる一方で、フィジカルな経験の価値について改めて考えなおす契機となった。 そんな状況

    • 『廃棄された場所ともうひとつの世界』

       話は、ふたりの「ケヴィン」からはじまります。ひとりは、著作『都市のイメージ』『廃棄の文化誌』にて1960年代に注目された都市計画家のケヴィン・リンチです。もうひとりは、伝説の雑誌『Whole Earth Catalog』元編集者で、雑誌『WIRED』初代編集長のケヴィン・ケリーです。  「建築・都市設計」の基板は新たなフェーズに移行しています。Googleなどのテック企業は、都市を「街ごと」買い上げして、都市デザインの実験をしています。(Google関連会社のサイドウォーク

      • 美学校「外道のススメ」の授業内展示『Let's open the window for the first time in many days. or let's go break the school window. ( 今日は久しぶりに窓を開けてみよう。もしくは学校の窓ガラスを割りに行こう。)』のステートメント

        環境犯罪学の世界では「割れ窓理論」というものがあります。建築物の窓ガラスが割れている状態を放置して置くと、周囲の建築物の窓ガラスを誰かがまた割り、その地域の治安はどんどんと悪化するので、犯罪の痕跡を街に残さずに、取り締まりを徹底していくというのもです。社会から抑圧を受け、行き場のない自己を解放するために、窓ガラスを割ってきた表現者たちは、犯罪者として徹底的に取り締まられ、浄化の流れに抗うことは出来きません。 「荒れる中学」といわれた80年代、不良学生たちは校舎の窓ガラスを割

        • 地域性や時代性がひもづいた作品群を、建物の「シャッター」あるいはカメラの「シャッター」でとらえることになぞらえて焦点を当てる『Multi shutter/マルチシャッター』展のステートメント

          『時代の湿度、我々は何故移動するのか』 昨今、丹下健三の再評価が目立つ。近代以後に、人々が紡いできた「都市開発」は素晴らしい効率的人工都市だった。土地の収益を最大限に拡張して行く事こそ、恒久的な街だと信じて都市は設計されてきた。首都圏に限らず、その為の交通網を日本全国に敷いてきた。地形を掌握する土木事業と人口獲得があってこその開発と資源。収益の最大化を最優先にし、その土地の背負うリスクを考えてこなかった。液状化する埋立て地も、津波による災害から逃れられない海抜の低い土地も、収

        「第四の部屋へ招待すべき日まで」

        • 『廃棄された場所ともうひとつの世界』

        • 美学校「外道のススメ」の授業内展示『Let's open the window for the first time in many days. or let's go break the school window. ( 今日は久しぶりに窓を開けてみよう。もしくは学校の窓ガラスを割りに行こう。)』のステートメント

        • 地域性や時代性がひもづいた作品群を、建物の「シャッター」あるいはカメラの「シャッター」でとらえることになぞらえて焦点を当てる『Multi shutter/マルチシャッター』展のステートメント

          内装工事中の新ギャラリーにて循環をテーマにした展覧会『Super Circulation / 超循環』展のステートメント

          大型ホームセンター行くと、木材コーナーにパーチクルボードという、木の小片に合成樹脂接着剤を塗布し一定の面積と厚さに熱圧成形してできた、木質ボードの板状製品が置いてある。原料としては主に産業廃棄物として回収された解体廃材である。私はホームセンターに行く度に、今でも、あの光景を思い出す。それは酷いトラウマとして、そして夢の様な冒険記として記憶に深く残っている。 この仕事をはじめてもう少しで20年が経とうとしている。十代の私にとって建築現場は憧れの地であった。自分がいつか建築家に

          内装工事中の新ギャラリーにて循環をテーマにした展覧会『Super Circulation / 超循環』展のステートメント

          「建築/土木/震災/オリンピック」をテーマに、気鋭作家11名が、都市の ”豊かな仮設” を試みる現代美術展『ground under』展のステートメント

          去りまた来る大規模災害と祝祭を前にして。共同体の「文化か安全か」。我々はその二者択一を突きつけられている。 この先、数十年後を考えるならば、第一に安全が重要であることは疑いの余地はないが、一方で共同体の文化や営みを考えることも同じく欠かせない。 この「いかなる街をつくるか」という難問を前に、我々はただ沈黙することは許されず、常に誰かに解答を迫られている。 約半世紀前に、生命として建築と都市を捉える想像力を掲げた先人がいた。 彼らは、都市全体を細胞の集まりと見立て、状況にあわ

          「建築/土木/震災/オリンピック」をテーマに、気鋭作家11名が、都市の ”豊かな仮設” を試みる現代美術展『ground under』展のステートメント