09 神隠し
あの子の布団はあたたかい。折りたたまれた掛け布団の間にもぐりこんで寝ていると、いつもあの子はちょっかいを出してきた。
でも、なんでだろう、今日はちょっと、寒い。
そろりそろりと布団を抜け出せば、家の中には誰もいなかった。毎日のことなので気にしない。フローリングが冷たかった。
もう脱走はできなくなっていた。誰か来ても、もう体が玄関まで飛んで行けなかった。筋肉が落ちて、骨が浮き出始めていた。
寒いなあ。とっても寒いよ。思いながら、棚の裏へ、奥へと進んでいく。埃がいっぱいだけど、狭いところはあたたかい。瞼を閉じた。
十五億回ですよ。
知ってるよ、わかってるってば。隠れたって、迎えにくるんでしょう?
ずいぶん眠ったころ、顔をくしゃくしゃにした、あの子が見つけてくれた。
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