09 神隠し

第1話「01 鍵」

前話「08 金木犀」


 あの子の布団はあたたかい。折りたたまれた掛け布団の間にもぐりこんで寝ていると、いつもあの子はちょっかいを出してきた。

 でも、なんでだろう、今日はちょっと、寒い。

 そろりそろりと布団を抜け出せば、家の中には誰もいなかった。毎日のことなので気にしない。フローリングが冷たかった。

 もう脱走はできなくなっていた。誰か来ても、もう体が玄関まで飛んで行けなかった。筋肉が落ちて、骨が浮き出始めていた。

 寒いなあ。とっても寒いよ。思いながら、棚の裏へ、奥へと進んでいく。埃がいっぱいだけど、狭いところはあたたかい。瞼を閉じた。

 十五億回ですよ。

 知ってるよ、わかってるってば。隠れたって、迎えにくるんでしょう?

 ずいぶん眠ったころ、顔をくしゃくしゃにした、あの子が見つけてくれた。


第10話「10 水中花」

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