08 金木犀

第1話「01 鍵」

前話「07 引き潮」


 さんざん抵抗したけれど、狭いかごの中に入れられた。これに入れられると、次に出されるときは、だいたいとんでもない場所になっている。めったに見ないおじいさんの広い家だとか(なんと玄関の外じゃなくて家の中に階段がある!)くさい匂いのする、いやな台の上だとか。

 今回は、いやな台の上だった。白衣を着たおじさんに、おしりに何か入れられて、じっとしてたら「熱はないですね」と言われ、さらに一言二言続く。

 その帰り道だった。突然、かごの窓がすこしだけ開いたかと思うと、ふわりと匂いが漂ってきた。

「もう咲いてるんだね、金木犀」

 あの子が言う。どうやら、嗅がせようとしてくれているらしい。
 あの子が使うトイレと同じ匂いなんだけど、どうしてだろう、空が青くて、雲が白かったからか、うれしかった。


第9話「09 神隠し」

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