01 鍵

 これ、宝箱だったんです。

 子どもって、一度はそういうものを持ちたがるでしょう? お菓子の箱とか、ブリキの缶とか。こっそり取っておいて、いっとう大切なものを、そっとしまう。

 でも、ある日突然、いらなくなる。

 たからものが変わってしまったからだと思っているんですけれど。
 この鍵もそう。たからものでした。

 おかしいでしょう、忘れていたんですよ。でも、憶えてる。記憶って、不思議ですね。
 何の鍵かはわかりません。でも、とても綺麗でしょう?

 まるで、仄青い水のようで。


第2話「02 屋上」

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