24 月虹

第1話「01 鍵」

前話「23 レシピ」


 雨が降っていたんですね。ずっと建物の中にいたので、気づきませんでした。

 しとしとと降る雨は好きです。やわらかく降る雨の音を聴きながら、あの子とよくうたた寝をしたものです。

 ああ、虹。
 すごい、始まりも終わりもちゃんと見えている。とっても近い。珍しいですね。

 虹って、神様が下界に渡るときに出るそうですよ。

 蛇だと思われたり、魔物だと恐れられたり。雨上がりに必ずしも出るわけではないから、昔の人にとってはとても神秘的なものだったんでしょうね。

 いつか、眠りにつく前に、あの子が渡ってきてくれたなら。
 そのときはきっと、夜空にほのかな虹が架かっているのでしょう。


第25話「25 ステッキ」

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