10 水中花

第1話「01 鍵」

前話「09 神隠し」


 ああ、今夜だな。そう思った。もう、どうしたらいいかは、わかっていた。
 隠れたら必ず見つけられてしまうし、その後はあの子にめちゃくちゃ怒られるから、とにかくじっとしていた。ときどき掛け布団の間を覗きこまれては、大好きだよ、と額を撫でられる。

 もうあんまり目が開けられない。視界は水の中にいるみたいにぼやけていて、もっとちゃんと見てからお別れしたいと思った。

 布団から出て、あの子の傍に寄る。あの子は物分かりが良くて助かったけど、やっぱり顔がくしゃくしゃになった。ぶさいく。

 お互いに、ちゃんとお互いの姿がはっきり見えていたかなんてわからない。
 でも、最期に、あの子の手に爪を立てることができた。

 そしてゆっくりと、沈んでいった。水の中で、仄青い花がひらいていくように。


第11話「11 からりと」

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